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医療費削減という難題 ヒントは身近なところに

米井嘉一・同志社大学教授
 
 

 「2022年は、日本が直面する問題に立ち上がろう」と「のろし」を上げた同志社大の米井嘉一教授。今回は医療費の高騰の問題に向き合います。しかし、一筋縄ではいきません。悩みあぐねた結果、日々の活動が医療費削減につながっていることが見えてきました。何よりも大切なのは、新型コロナウイルス対策でも明らかになった科学的根拠(エビデンス)と訴えます。

行き詰まった末に……

 前回の連載で「私たちは、直面する問題に立ち上がる時!」と、「のろし」を上げてしまいました。前回の「少子化」に続き、今回取り上げるのは「医療費の高騰」です。

 いろいろと将来の構想を練ってみたのですが、簡単なことではありません。正直に言うと、行き詰まってしまったのです。原稿の締め切りも迫っています。そこで、過去を振り返ることにしました。過去20年の間に、私が何をやってきたか、何を求めてきたのか。そこから、やらねばならないことが見えてきました。

 私にとって、大きな転機になったのは次の三つの出来事でした。

アンチエイジング医学の幕を開ける

 第一は、01年に「日本抗加齢医学研究会」を設立したことです。現在の「一般社団法人日本抗加齢医学会」の前身です。

 これは、国民の健康長寿を目指す抗加齢(アンチエイジング)医療の幕開けでした。抗加齢医学の目標は「不老長寿」ではありません。それは不可能です。一年一年の避けがたい老化、健常な老化、これは悪いことではありません。問題となるのは「病的な老化」です。

 病的な老化を早めに見つけて(早期発見)、現状と原因を調べ(早期診断)、適切に対処すること(早期治療)を実践します。抗加齢医療を「アンチ『病的エイジング』」と考えるとわかりやすいでしょう。

 当時、私は日本鋼管病院(川崎市)に勤務していました。経営母体は、日本鋼管株式会社(現在のJFEグループ)です。早期診断に必要な「アンチエイジングドック」を設立するために、会社の幹部や健康保険組合と折衝を重ねました。

 「実年齢が60歳であっても、身体機能が若い状態に保たれていればよいのです。体の機能を評価した『機能年齢』が実年齢の8割となる『48歳』であれば、自分や家族や会社のために働き続けることができ、生活を楽しむ余裕が生まれて社会貢献もできるでしょう。アンチエイジングを一語でいえば、『機能年齢の老化予防と若返り』なんですよ」

 「アンチエイジングによって従業員が元気になって、若々しくなるということは、病気が減るということですよ! 会社としても、病気による欠勤も減るし、生産効率も高まるし、健康保険組合からの支出が減ります! …

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同志社大学教授

よねい・よしかず 1958年東京生まれ。慶応義塾大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了後、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学。89年に帰国し、日本鋼管病院(川崎市)内科、人間ドック脳ドック室部長などを歴任。2005年、日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授に就任。08年から同大学大学院生命医科学研究科教授を兼任。日本抗加齢医学会理事、日本人間ドック学会評議員。医師として患者さんに「歳ですから仕方がないですね」という言葉を口にしたくない、という思いから、老化のメカニズムとその診断・治療法の研究を始める。現在は抗加齢医学研究の第一人者として、研究活動に従事しながら、研究成果を世界に発信している。最近の研究テーマは老化の危険因子と糖化ストレス。