理由を探る認知症ケア

思っていたのと違った? サ高住に入居した女性から笑顔が消えたわけ

ペホス・認知症ケアアドバイザー
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 夫が亡くなった後、約20年間にわたり一人暮らしをしてきた80代女性のYさん。アルツハイマー型認知症で生活に支障をきたすようになり、心配した長女の意向もあってサービス付き高齢者向け住宅(サ高住、安否確認や生活相談などのサービスが付いたバリアフリー対応の賃貸住宅)に入居することになりました。入居当初は楽しく過ごしていたYさんでしたが、次第に元気がなくなっていきました。ある日、Yさんは一緒に買い物に行くため訪れた長女に、「(入居前に)思っていたのとは違う」と打ち明けます。Yさんはサ高住での暮らしに何を望んでいたのでしょうか。認知症ケアアドバイザーのペホスさんが解説します。

一人で暮らすようになって20年

 Yさん(80代・女性)は、夫との死別後、20年近く一人暮らしをしてきました。しかし、アルツハイマー型認知症と診断されて5年が経過したあたりから、同じものを買ってきたり、デイサービスの利用日を忘れて出かけていたりと、暮らしに支障が出るようになってきました。

 心配した長女は、一人暮らしが難しくなる前に、施設やサ高住など、誰かと一緒に暮らせるところに移った方がいいのではないかと思うようになり、ケアマネジャーに相談しました。

 ケアマネジャーは、長女が心配していることや、これからの過ごし方に耳を傾けてくれました。そして、「長女様のご意向は承りました。Yさんのご意向も確認が必要なので、ご自宅で聞き取りをしましょう」と話し、後日ケアマネジャーがYさんの自宅を訪れることになりました。

「まだまだ一人で大丈夫」というYさん

 ケアマネジャーの訪問にYさんは「まだまだ一人で暮らせるわよ」「時々は同じものを買ってくることもあるけれど、毎回じゃないんだから」と少し不満そうでした。このような認識でいたので、一人暮らしを「卒業」して施設で暮らすということに、前向きではありませんでした。

 見守る人がいれば一人で暮らせるというレベルだったので、本人が「まだまだ一人で大丈夫」と思うのも、自然なことでした。

 ケアマネジャーはYさんに「いつまでも…

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ペホス

認知症ケアアドバイザー

ペ・ホス(裵鎬洙) 1973年生まれ、兵庫県在住。大学卒業後、訪問入浴サービスを手がける民間会社に入社。その後、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、訪問介護、介護老人保健施設などで相談業務に従事。コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にて、コーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、かかわる人の内面の「あり方」が、“人”や“場”に与える影響の大きさを実感。それらの経験を元に現在、「認知症ケアアドバイザー」「メンタルコーチ」「研修講師」として、介護に携わるさまざまな立場の人に、知識や技術だけでなく「あり方」の大切さの発見を促す研修やコーチングセッションを提供している。著書に「理由を探る認知症ケア 関わり方が180度変わる本」。介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員。ミカタプラス代表。→→→個別の相談をご希望の方はこちら