地域で暮らし続ける~日本とデンマークの現場から フォロー

「横並び社会」が生む受験競争 早生まれの子たちが負うハンディキャップ

銭本隆行・日本医療大学認知症研究所研究員
 
 

 大学入学共通テストの試験会場だった東京大近くの路上で、高校2年の少年に受験生の高校生ら3人が刺された事件。少年は逮捕後の調べに、「医者になるため東大を目指して勉強していたが、成績が上がらず自信をなくした」などと供述したそうです。デンマークで子育てした経験をもつ銭本隆行さんは「子どもたちを受験に駆り立てる日本社会のひずみが生んだ事件」と指摘します。デンマークは義務教育の仕組みも日本と異なり、子どもたちは自分の成長に合わせた教育を受けることができるといいます。日本とデンマークの教育の違いはどこにあるのでしょうか。銭本さんが「横並び社会」ともいえる日本の現状に警鐘を鳴らします。

同じクラスに5~7歳の子どもが在籍するデンマーク

 大学入学共通テストの初日、東大前で高校2年の少年が3人を刺傷する事件が起きました。子どもたちを受験に駆り立てる日本社会のひずみが生んだ、痛ましい事件といえるのではないでしょうか。「大学卒業」という資格だけを取りに行く日本の学歴社会には大きな問題があるといえます。

 筆者が暮らしたデンマークは、学歴社会ではまったくありません。デンマークは原則として小中一貫で、小中学校に相当する学校は「国民学校」と呼ばれます。学年は0~10年生までありますが、10年生は任意のため、0~9年生までの10年間が義務教育期間となっています。

 日本では、小学校に上がる年齢は、4月2日以降に7歳になる者、と明確に決められています。一方、デンマークでは、国民学校の入学年齢は8月1日以降に7歳になる児童が「目安」とされています。デンマークは秋から新学期が始まり、現実の年齢基準はかなりゆるやかなものです。

 筆者の長男がデンマークで国民学校に入学した際、田舎の学校だったこともあり、長男のクラスの児童数は16人でした。長男は4月に6歳になっていましたが、クラスの中で6歳だったのは11人、5歳が3人、7歳が2人いました。

 「年齢がバラバラだな」と思って、長男の担任のキヤステン先生に聞いてみると、「5歳の子どもはもう1~2カ月したら6歳になるんです。成長の様子から他の子と一緒に学習できるとみなされたんですよ」とのことでした。

 7歳の児童がいる理由については、「前の年に0年生をやったけれど、言葉や社会性がまだ十分ではなかったので、もう1年間、0年生をやることになりました」との答えでした。

 この年の10月、…

この記事は有料記事です。

残り2227文字(全文3232文字)

日本医療大学認知症研究所研究員

ぜにもと・たかゆき 1968年広島市生まれ、福岡市育ち。51歳。早稲田大学政治経済学部在学中にヨーロッパを放浪。そのときにデンマークと出会う。大学卒業後、時事通信社、産経新聞社で、11年間の記者生活を送る。2006年にデンマークへ渡り、デンマーク独自の学校制度「国民高等学校」であるノアフュンス・ホイスコーレの短期研修部門「日欧文化交流学院」の学院長を務めた。全寮制の同校で知的障害者のデンマーク人らと共に暮らし、日本からの福祉、教育、医療分野に関する研修を受け入れながら、デンマークと日本との交流を行ってきた。2010年にオーデンセペダゴー大学で教鞭を執り、2013年にはデンマークの認知症コーディネーター教育を受けた。  2015年末に日本に帰国し、2016年3月に名古屋市の日本福祉大通信制大学院で認知症ケアシステムに関する修士号を取得し、同年、福岡市の精神障害者の生活訓練事業所の設立・運営に携わる。現在は札幌市の日本医療大学認知症研究所と名古屋市の日本福祉大学大学院博士後期課程に在籍しながら地域包括ケアシステムに関する研究を進めている。ノーマライゼーション理念の提唱者であるデンマーク人の故N.E.バンクミケルセンにちなむN.E.バンクミケルセン記念財団理事も務める。