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馬から教えられる人間の「力」と「おごり」

竹内真里・フランス在住ライター
馬は草や麦類などの飼料を食べる=筆者撮影
馬は草や麦類などの飼料を食べる=筆者撮影

 フランスで「乗馬療法」(馬介在療法)が広がっています。障害を持つ人の身体機能を高めるだけではなく、精神面への良い影響も期待されています。「言葉が通じる人間同士よりも、馬によって見えてくる真実がある」と話す人もいるそう。フランス在住のライター、竹内真里さんは「新型コロナウイルスの拡大によるギクシャクとした人間関係の問題にも気づかされる」と明かします。動物との触れ合いの効用を探ります。

心が固まった人が笑顔を見せた

 リヨンから車で40分も車を走らせると、緑豊かな田園風景が広がる。トラクターが走り、放牧中の牛、馬、ロバ、ヤギ、羊などがいて、堆肥(たいひ)の臭いがプーンとする。フランスは農業国だったんだ、と思う瞬間だ。

 牛は乳牛や肉牛として飼育されているが、最近よく見かける馬たちは主に愛玩動物、趣味の乗馬用として飼われている。子どもの習い事でも、乗馬が人気だ。都市部を離れれば、乗馬教室が複数あるし、たまに公道を歩く馬の姿が見られる。海の近くでは、砂浜で乗馬を楽しむ人の姿がある。

 馬に関わる人たちに話を聞いた。

 馬を2頭飼っているエステルさんはこう話す。

 「私の家では親が動物好きで、常に動物を飼っていました。今も実家には、ウサギ、猫、犬、鶏、そして馬がいます。この2頭の年齢は17歳ぐらいで、私が小学生の時からずっと一緒です。ペットと呼ぶには大きすぎるでしょうか。むしろ家族の一員ですね。

 馬を飼うには広い土地も必要ですし、世話は力仕事で体力もいります。私は昔からこういう生活をしているので大変だとは思いません。

 馬は感じ取る能力がとても優れています。こんなことがありました。私は普段は病院に勤めていますが、ボランティアで介護施設のイベントにヘルパーとして参加した時のことです。ある日、入居者に乗馬療法を紹介する企画がありました。

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フランス在住ライター

1978年千葉県生まれ。2000年から2002年までフランス南部マルセイユに滞在。その後、東京や香港でライターとして取材・執筆に従事。2015年に再びフランスへ。現在はリヨン市内でフランス人の夫、娘と暮らしながら現地情報を発信している。