誰もがツイッターやユーチューブなどのSNSで情報発信できる時代になりました。医療に関する情報を発信する人も多く、正確性の低い医療情報も増えています。新型コロナウイルス感染症に関する投稿を目にして、そのことを認識された方もいらっしゃるでしょう。

 がんに関する情報についても、インターネットに不正確で危険な情報があふれるようになり、がん患者さんや家族を悩ませる事態になっています。一般の方が科学的根拠(エビデンス)のある情報を見極めるのはたやすくありません。そこで今回は、正確ながん治療情報、特に大事な治療方針に関する情報を見つける方法を解説していきます。

がん治療は個人ごとに異なる

 ネットではさまざまながん情報を検索できますが、そのうち正確なものの割合をご存じでしょうか。

 日本のがん情報サイトの正確性について検討をした日本の研究(Ogasawara R, et al. JMIR Cancer. 2018 4<2>:e10031)があります。2016年に日本医大などのチームにより実施されたこの研究では、検索サイトで「がん治療」などのキーワードを入れて出てくる247のがん情報サイトに対して、がん専門医が情報の正確性を検証しました。その結果、医学会の診療ガイドライン(指針)に基づいて書かれたサイトの割合はわずか10.1%でした。

 「ネットに書かれているがん情報を安易に信じてはいけない」。このことを、まずは頭の片隅に置いておいてください。

 ネットでがん情報を調べる前に必ず知っておいてもらいたいのが、「がん治療は個人ごとに大きく異なること」です。「がん」は、何百種類もある「悪性腫瘍」の総称です。それぞれのがんは、特徴も必要な治療も違います。

 例えば、「肺がん」と「乳がん」では診断方法も全く異なり、使われる治療薬も大きく違います。乳がんにとてもよく効く薬が肺がんにも使えるとは限りません。それどころか、同じ乳がんの中ですら、実は主に四つの種類の乳がんのタイプがあって、それぞれ効く治療薬も変わってきます。

 さらにいうと、たとえ同じタイプの…

この記事は有料記事です。

残り1687文字(全文2559文字)

がん研究者/アラバマ大学バーミンハム校助教授

筑波大学医学専門学群卒。卒業後は脳神経外科医として、主に悪性脳腫瘍の治療に従事。患者と向き合う日々の中で、現行治療の限界に直面し、患者を救える新薬開発をしたいとがん研究者に転向。現在は米国で研究を続ける。近年、日本で不正確ながん情報が広がっている現状を危惧して、がんを正しく理解してもらおうと、情報発信活動も積極的に行っている。著書に「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療」(ダイヤモンド社、勝俣範之氏・津川友介氏と共著)。Twitterアカウントは @SatoruO (フォロワー4万5千人)。