共に生きる~子育ちの現場から

増加する子どもの自殺 交わしたい「またあした!!」という“希望の言葉”

渡部達也・NPO法人ゆめ・まち・ねっと代表
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 文部科学省によると、2020年度に自殺した小・中・高校生は過去最多の415人に上りました。なかでも女子高生の自殺者の増加が目立ちます。静岡県富士市で子どもたちの居場所作りをしているNPO法人「ゆめ・まち・ねっと」代表の渡部達也さんは、先日、女子高生に向けて講演したとき、「自立」とは何かと問いました。すると、口々に「一人で何でもできるようになること」という趣旨の答えが返ってきたといいます。しかし、それは間違いだと指摘します。渡部さんが、いま自殺を考えるほどつらい思いをしている子どもたちに願うこととは――。

「一人で何でもできるようになること」は本当に自立?

 「ねえ、みんなは小学生、中学生のとき、『自立』って、どういうことだと教えられてきた?」

 「一人で何でも自分のことができるようになること」

 「身の回りのことが親とかに手伝ってもらわないで、できるようになること」

 「誰かを頼らずに自分一人でやれるようになること」

 先日、児童福祉を専門に学ぶコースがある高校で特別授業をさせてもらいました。女子生徒16人のクラスでした。生徒たちに冒頭の質問をすると、異口同音に「一人で何でもできるようになることが自立だ」という答えが返ってきました。

 「みんなが小中学生のときに教えられてきたことは間違いなんだよ。それは『自立』じゃなくて、『孤立』って言うんだ」

 そう伝えて、こんな統計を紹介しました。

 これは、小学生、中学生、高校生の自殺者数の推移を示すグラフです。文科省によると、多少の増減はあるものの右肩上がりとなっていて、20年度は過去最多となる415人でした。毎日1人以上の小中学生や高校生が自ら命を絶っている計算になります。

 06年度から20年度にかけて、小中学生、高校生の人数は約150万人減っています。自殺率のグラフにしたら、もっと急カーブの右肩上がりになるでしょう。20年度に過去最多を記録してしまった要因は、女子高生の自殺の増加です。前年度(63人)から倍増以上の131人でした。授業を受けた全員が女子生徒でしたから、そんな数字も紹介した上でこう伝えました。

 「たくさんの人に迷惑を掛けながらも、いろんな人に助けてもらって、自分らしく生きていくこと。それが本当の『自立』だと思うんだ。131人の女子高生は、どうして自ら命を絶つという道を選ばなきゃならなかったんだろうね。もしかすると、みんなが答えてくれたような『自立』を教え込まれてきて、誰かを頼ること、誰かに『助けて』と言うことができなかったのかもしれないね。みんなは、どうか、つらいことがあったとき、苦しいことがあったとき、自分一人で抱え込んで『孤立』しないでほしい。今ここにいる友達や先生や親や、誰かにSOSを伝えてね。伝える人がいないと思ったら、僕らのことを思い出して、連絡してね」

 そして、…

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渡部達也

NPO法人ゆめ・まち・ねっと代表

わたなべ・たつや 1965年静岡県三島市生まれ。茨城大卒。88年静岡県庁入庁。児童相談所ケースワーカーや大規模公園「富士山こどもの国」の設立・運営、国体および全国障害者スポーツ大会の広報などに携わる。「まちづくり」という夢を追い求め、2004年に16年余り勤めた県庁を退職。同県富士市に移住し、同年秋、妻・美樹と共にNPO法人「ゆめ・まち・ねっと」を設立。空き店舗を活用した放課後の居場所「おもしろ荘」や地元の公園と川で自由な遊びを楽しむ「冒険遊び場たごっこパーク」、「0円こども食堂」などの開催を通じて、子どもの遊び場づくり・若者の居場所づくりに取り組む。里親として虐待を受けた子どもの社会的養育にもかかわっている。愛媛県松前町が創設し「義農精神」(利他の精神)を体現する活動に取り組む個人・団体を表彰する第1回「義農大賞」など受賞多数。 著書に「子どもたちへのまなざし-心情を想像し合い 積み重ねてきた日常 切れ目のない関係性-」(エイデル研究所)。