積み重なった落ち葉から芽を出しているふきのとう=秋田市浜田の浜田森林総合公園で2012年4月7日、田原翔一撮影
積み重なった落ち葉から芽を出しているふきのとう=秋田市浜田の浜田森林総合公園で2012年4月7日、田原翔一撮影

 寒さ厳しい季節がようやく終わりを迎え、草木が芽吹き花ほころぶ春がやってきたというのに、毎日流れてくるニュースは陰鬱な気分にさせられるものばかりです。

 一向に終息の兆しが見えない疫病に、坂道を転がり落ちるように悪化する国際情勢、物価の高騰と経済不況、大雪被害に火山噴火……こうした厄災のあおりを受けて、例年になく厳しい春を過ごしている人もさぞや増えていることと想像します。

 こうした話題は春という季節に似つかわしくないと思われるかもしれませんが、私に言わせると春は危険な季節です。草木が芽吹き花ほころぶ……と書きましたが、植物にとっても動物にとっても、冬の休眠期間から活動を始めたばかりの時期は命を奪われるリスクがとても高くなるといえます。

 春の味覚といえば、フキノトウやタケノコ、菜の花といったものを思い浮かべるでしょう。これらはすべて苦難の冬を乗り越えてやっと地上に出てきたところを摘み取られているわけです。とはいっても、春の生命力は旺盛で、命を根絶やしにするほど食べ尽くされることはそれほどないのでしょうが……。

 春が危険なのはヒトにとっても同じです。三寒四温という言葉がありますが、特に早春は急に寒くなる日があります。長い冬の間、体に気を付けて過ごした人でも、春先に心筋梗塞(こうそく)になったり肺炎になったりして入院を余儀なくされる、ということは珍しくありません。私も長年悩まされていた、スギやヒノキの花粉症をお持ちの方にとってもとてもつらい時期です。

 また、日の出の時間が目立って早くなるのもこの期間の特徴です。東京の日の出時刻は冬至から小寒の間の約2週間ではわずか4分の違いですが、春分から清明の間では実に22分も早くなります。

 ヒトの体内時計は、24時間よりやや長い周期で設定されているといわれます。毎朝目覚めると目から光の刺激が入って、24時間ちょうどにリセットされるのです。一方、全く光の刺激がないような環境では、寝たり起きたりの活動と休息のリズムは少しずつ後ろにずれていってしまうようにできています。

 飛行機で海外に出かけるとき、西の方へ出かける場合と東の方へ行く場合では時差ぼけのつらさにかなり違いがあるのは、体内時計はリセットされないと後ろにずれていってしまう性質があるからです。

 アジア方面への旅行は少し「夜更かし」をするぐらいで済むのに対して、オセアニアやハワイ方面へは毎日頑張って「早起き」をしなければならず大変です。ただし…

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NTT東日本関東病院リウマチ膠原病科部長

1976年京都生まれ。京都大学医学部卒。北里大学大学院修了(専攻は東洋医学)。東京女子医大付属膠原病リウマチ痛風センター、JR東京総合病院、聖路加国際病院Immuno-Rheumatology Centerを経て、現在、NTT東日本関東病院リウマチ膠原病科部長。福島県立医科大学非常勤講師。著書に「未来の漢方」(森まゆみと共著、亜紀書房)、「漢方水先案内 医学の東へ」(医学書院)、「ほの暗い永久から出でて 生と死を巡る対話」(上橋菜穂子との共著、文藝春秋)など。訳書に「閃めく経絡―現代医学のミステリーに鍼灸の“サイエンス"が挑む! 」(D.キーオン著、須田万勢らと共訳)がある。