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「しっかりかむこと」はスポーツにもインパクトをもたらす

 
 

 歯科は、スポーツにおいても重要な役割を果たします。たとえばコンタクト(接触)スポーツなどに取り組む大柄な選手の「閉塞(へいそく)性睡眠時無呼吸症候群」の治療や、けがを防ぐためのマウスガード(マウスピース)の作製などです。それらは休養の質の向上や持てる力を発揮することにつながります。さらに、しっかりかむことは、栄養摂取の観点からも大切です。東京歯科大学口腔(こうくう)健康科学講座スポーツ歯学研究室の武田友孝教授が、歯科が人々の栄養・休養・運動に与える影響を解説します。

しっかりかまずに食べると栄養が取り込まれない

 健康や体力の維持・増進には、適度で適切な「栄養・休養・運動」が必要であることは言うまでもありません。風邪、インフルエンザ、そして今、大きな問題になっている新型コロナウイルスなどの感染症といった病気だけでなく、骨折や捻挫などのけがにおいても、その影響は明らかです。

 では、歯科がかかわるけがや病気、不調は、健康や体力にどのような影響を与えているのでしょうか? あまり意識されていないのではないでしょうか?

 まずは、栄養に与える影響から見てみましょう。体の発育や活動に必要な栄養は、基本的には、食事から得ます。この“食”という漢字は、よくできた意味深い文字だと思います。表意文字である漢字の“食”は、「人を良くする」という意味と考えられます。上の「人」の部分は「集めてふたをすること」という解釈もありますが、ここでは「人を良くする」の意味として取りたいと思います。

 現在は、スポーツにおいても栄養の充実が大きなインパクトを持っています。栄養学に支えられた良質な食事をとることは重要ですが、それだけではありません。ここで、一つの研究論文の内容をご紹介したいと思います。

 一日中アーモンドだけを食べてもらい、翌日に排せつされたエネルギー量を見た研究があります。実験の条件として、1口5グラムを11回食べたものを1食とし、1口当たりの咀嚼(そしゃく)回数を10回、25回、40回の三つのグループに分けました。その結果、咀嚼回数の多いグループでは、明らかに排せつされたエネルギー量が少なかったのです。同じものを食べても、しっかりかまなかったり、かめなかったりすると、栄養として取り込まれないことになります。

「ガムをかみながら散歩」がよい睡眠につながる

 次に、休養との関連について見てみましょう。…

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