“子ども食堂”の時代―親と子のSOS―

パパも“産後うつ”に……「男性版産休」の効果と課題とは

可知悠子・北里大学講師
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 今年、改正育児・介護休業法が順次施行されます。この法改正によって、父親の育児参加を取り巻く環境が大きく変わるエポックメーキングな年になるはずです。4月は企業に対して、もうすぐ父親になる「プレパパ」の従業員に育児休業制度を個別に周知し、取得の意向確認を義務付ける、いわゆる「男性育休義務化」が始まります。10月からは、産後パパ育休(出生時育児休業=男性版産休)という制度が創設されます。育休とは別に、出生後8週間以内に4週間まで休みを取得できるようになります。こうした制度を通じて、育児に関わる父親が増えることが期待されます。そこで、父親の育児参加の効果と課題について、これまでの研究をもとに考えてみます。

育児に関心のある男性は増えている

 日本では育児の中心はまだまだ母親ですが、育児に関わる父親は確実に増えています。父親が保育園への送迎を担う光景も、週末の公園で子どもたちと遊ぶ光景も、ごく一般的になりました。若い世代を中心に、「子どもができたら、育児に積極的に関わりたい」という男性も増えてきています。

 一方、いまだに「男は仕事」という意識から、職場や地域社会においては父親の育児参加への理解はあまり進んでいません。また、男性自身も“競争に勝ちぬく男のロマン”といった価値観に縛られている面があります。「育児にもっと時間を割きたいが、出世に響く」と葛藤する男性は少なくありません。今は「男は仕事、女は家庭」という固定的な生き方から、性別によらず多様な生き方を選べる社会への過渡期にあるのだと思います。

父親が育児参加すると家族にさまざまな効果が期待できる

 では、父親が育児に参加すると、パートナーや子どもにどのような効果があるのでしょうか? 日本の研究で示されたエビデンス(科学的根拠)を中心に紹介していきたいと思います。

 まず、パートナーの産後うつの予防につながることが期待できます。環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査」(エコチル調査)に参加した7万5000人あまりの母親を分析し、生後半年時点において、父親の「子どもと遊ぶ」「風呂に入れる」など7種類の育児行動と、母親のメンタルヘルスの関連を調べた研究があります。父親がこれらの育児行動を「いつもしている」場合と、「全くしない」場合を比べると、生後1年時点で母親がうつや不安を抱える可能性が、「いつもしている」方が「全くしない」よりも24~64%低くなることが示されています。

 また、夫婦関係が良好になり、第2子出産につながりやすいことも指摘されています。国立成育医療研究センターの加藤承彦(つぐひこ)・行動科学研究室長(幼児教育学)らは、厚生労働省の全国調査に参加した1万7000世帯を分析し、男性の…

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可知悠子

北里大学講師

かち・ゆうこ 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。2006年から10年間、臨床心理士として子どもや女性のカウンセリングにあたる。帝京大学医学部衛生学公衆衛生学講座助教、日本医科大学衛生学公衆衛生学教室助教を経て、18年4月から北里大学医学部公衆衛生学単位講師。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学教室客員研究員、国立成育医療研究センター社会医学研究部共同研究員、首都大学東京客員准教授。著書に「保育園に通えない子どもたち――『無園児』という闇」(筑摩書房)、共著に「子どもの貧困と食格差~お腹いっぱい食べさせたい」(大月書店)。自身も子育て中。労働者とその子どもの健康の社会格差をテーマに研究を行っている。