人生なりゆき~シニアのための楽しい生き方・逝き方

「死に目」に会うよりも大切なこととは?

石蔵文信・大阪大学招へい教授
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 前立腺がんと向き合う石蔵文信・大阪大招へい教授が、「死に目」を重視する考え方に疑問を投げかけます。死にゆく本人にとっても家族にとっても、もっと大切なことがあるというのです。

終末期は家族の負担も重い

 先日、がんの末期で入院している人の家族について取り上げたコラムを読みました。がんの末期で入院されているので、いつ亡くなるか分かりませんから、家族がずっと病室で待機をしているようでした。入院していますので、おそらく患者には点滴や栄養チューブなど、最低限の延命処置は施されているのだと思います。

 このような栄養補給をすると、死期が少し長くなる可能性があります。家族はかなり長い期間、病室に詰めていて、かなり疲労困憊(こんぱい)している姿を見た看護師さんが「しばらく家で休憩されたらいかがですか?」とアドバイスをしたようです。

 以前は、がんの末期になると痛みや苦しみを伴うため、病院で麻薬などを使った緩和ケアを受ける必要がありました。しかし、現在は、開業医の先生にみとりをしてくれる方も多くなっていますし、家庭でも使える経口の麻薬でかなり有効な緩和ケアができます。

昨年体験した「死にゆく感覚」

 私自身は、最後には入院をせず、緩和ケア医に頼んで自宅の一室で静かに旅立とうと思っています。昨年私が経験したように、骨に転移したがんではかなり痛みを伴いますので、最終的には麻薬を使っていただくことになるでしょう。そして、食事や水分摂取がだんだん少なくなることも経験しました。

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石蔵文信

大阪大学招へい教授

いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。