理由を探る認知症ケア

“本心”はどこに……張り切っていた父がデイサービスを休んだ理由

ペホス・認知症ケアアドバイザー
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 若いころは家電量販店の営業職として勤め、息子の学校行事には仕事を休み、必ず参加したという70代男性のKさん。そんな家族思いのKさんは、70歳になったころから病気で立て続けに入院するようになり、「要介護2」の認定を受けました。デイサービスに通い始め、気力、体力を取り戻しつつありましたが、ある日突然「休みたい」と訴えるようになりました。理由をつかみかねていた息子さんから相談を受けた認知症ケアアドバイザーのペホスさんがアドバイスしたところ、Kさんの意外な“本心”にたどり着くことができました。Kさんの足がデイサービスから遠のいた理由は何だったのでしょうか? ペホスさんが解説します。

正義感が強く、家庭を大切にするKさん

 Kさん(70代・男性)は、家電量販店の営業職として勤め、家族の暮らしを支えてきた優しいお父さんでした。大学時代は折しも学生運動が盛んな時期だったため、社会問題に関心を寄せ、街頭デモに参加するなど、若い頃から正義感の強い方だったようです。

 息子さんは、自分が社会人として自立し、家庭を築いてから「親父は家族を大切にする人だったんだ」ということに気が付いたそうです。学校行事には仕事を休んで必ず参加してくれたし、趣味でもスポーツでも「やってみたい」と言ったことは、いつもチャレンジさせてくれました。これが、どれほど幸せなことだったかと実感しているそうです。

 そんな良き父親であるKさんは、70歳になってすぐに心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞で立て続けに入院するようになりました。趣味だったゴルフにも行けなくなってからは、徐々に気力、体力に衰えが見え始めました。

孫の誕生で奮起し、デイサービスの利用にも前向きに

 脳梗塞による軽度の認知症の症状が見られたKさんは、介護認定の結果「要介護2」と判定されました。そのころ、Kさんは手首を骨折していました。Kさんとその家族は、骨折後のリハビリと外出する機会を作りたいと考え、デイサービスを利用することを決めました。

 ちょうどその頃、息子さんに子どもが生まれました。「孫のためにも元気なおじいちゃんでいたい」「孫が歩けるようになったら手をつないで公園を歩きたい」という夢もふくらんでいたため、運動ができるデイサービスに通うことにとても前向きでした。

 初日は「緊張する」と言っていたKさんですが、いざ参加して…

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ペホス

認知症ケアアドバイザー

ペ・ホス(裵鎬洙) 1973年生まれ、兵庫県在住。大学卒業後、訪問入浴サービスを手がける民間会社に入社。その後、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、訪問介護、介護老人保健施設などで相談業務に従事。コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にて、コーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、かかわる人の内面の「あり方」が、“人”や“場”に与える影響の大きさを実感。それらの経験を元に現在、「認知症ケアアドバイザー」「メンタルコーチ」「研修講師」として、介護に携わるさまざまな立場の人に、知識や技術だけでなく「あり方」の大切さの発見を促す研修やコーチングセッションを提供している。著書に「理由を探る認知症ケア 関わり方が180度変わる本」。介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員。ミカタプラス代表。→→→個別の相談をご希望の方はこちら