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私が男性ホルモンの補充治療を選ばないわけ 男性更年期の真実/2 

石蔵文信・大阪大学招へい教授
現代はストレス社会=竹内紀臣撮影
現代はストレス社会=竹内紀臣撮影

 私は男性更年期外来での診察を約20年続けています。今回は、そこへやってくる患者さんたちについて説明したいと思います。

患者の主な年代は40~60歳代

 多くの中高年男性は、家庭や仕事のストレスから発症しています。男性更年期外来の主な患者さんの年代は、52歳を挟んで上下10歳くらいの幅になります。つまり、40歳くらいから60歳くらいまでの患者さんが中心です。しかし、30歳前後の若い人や75歳以上の高齢者も診察にやってきます。

 そもそも男性ホルモンは思春期に急激に増加し、中年期から徐々に減っていきますが、女性のように明らかな閉経がありません。手術で睾丸(こうがん)などを除去しない限りは、突然男性ホルモンがなくなるということはあり得ません。しかも男性ホルモンの数値は人によってバラバラで、最近まで正常値すらはっきりしなかったというのが現状です。

 中高年になれば当然、男性ホルモンはやや減少しますが、診察に来た方の半数以上は正常値です。泌尿器科の治療では、ホルモン値が低い方にだけホルモン補充をしているようですが、該当するのは男性更年期外来を訪れた患者さんのおそらく半分以下になるでしょう。

うつ病や不安障害と似た症状

 患者さんの症状は、女性の更年期とほとんど同じです。頭痛・めまい・ほてり・肩こり・動悸(どうき)・胃腸の障害や抑うつ感を訴えられます。男性に特徴的なのは、勃起障害くらいでしょう。しかし、患者さんの症状をよく聞いてみると、うつ病や不安障害の症状とほぼ一致します。そのため、私は男性ホルモンを補充するという治療は選ばず、心療内科的に抗うつ剤を中心とした治療を始めました。

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大阪大学招へい教授

いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。