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新型コロナ 糖尿病による重症化を防ぐための三つのポイント

矢部大介・岐阜大学糖尿病・内分泌代謝内科学教授
 
 

 糖尿病は、患者と予備軍を合わせて約2000万人に達する「国民病」です。悪化すると心臓病や脳卒中など命にかかわる恐れが高まり、失明や足の切断、人工透析を余儀なくされる場合もあります。さらに、新型コロナウイルスに感染すると重症化リスクが高くなります。糖尿病の治療や研究が専門の矢部大介・岐阜大学教授は「不安に思う患者さんが多いようですが、それらの不安は一概に正しいとはいえないようです」と話します。それはどういうことでしょうか。糖尿病でもいきいきと生きるノウハウを紹介する連載の第1回です。

①良好な血糖値の維持を目指そう

新型コロナに感染しやすいの?

 新型コロナウイルス感染症のまん延が続く中、不安な気持ちで過ごしている糖尿病患者さんや予備軍の方、そのご家族も多いのではないかと思います。以前、ある患者さんから「新型コロナが重症化しにくくなる糖尿病の治療薬はありますか?」と聞かれたことがあります。糖尿病の患者さんたちが「自分は重症化しやすいに違いない」と心配されているのだと感じました。しかし、その不安は一概に正しいとはいえないようです。

 意外かもしれませんが、新型コロナに感染した人を大規模に調査した研究では、「糖尿病があるから新型コロナに感染しやすい」という証拠は見つかっていません。一方、テレビやインターネットでは「新型コロナ 糖尿病で重症化」という見出しを多く目にします。実際、「糖尿病患者さんが新型コロナに感染すると重症化する」という報告は続いています。どういうことなのか、これまで明らかになった研究成果をくわしく見てみましょう。

 多数の研究から明らかになっているのは、日ごろから健康的な食事や運動、必要に応じて糖尿病の治療薬を使用することによって良好な血糖値を保たれている患者さんは、血糖値が高い状態にある患者さんと比べて、重症化するリスクが低いということです。

重症化を防ぐ糖尿病の治療薬は?

 最近もアメリカの研究チームが、4万人以上の糖尿病患者さんのHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー。直近1~2カ月の血糖値の平均点のような値)と、新型コロナの重症化の関係を分析した研究成果を発表しました。HbA1cは、人工透析や失明につながるような合併症を予防するために7%未満を目標とすることが推奨されています。新型コロナに感染した7%未満の患者さんと、7%以上の患者さんを比較したところ、HbA1cの数値が高い人ほど、人工呼吸器などが必要となるリスクが高くなりました。

 血糖値が高い状態が続いている糖尿病患者さんが新型コロナで重症化するメカニズムは、「体をウイルスから守る免疫力が高血糖によって低下してしまうことに加えて、血液が血管の中で固まりやすくなるため」と考えられています。いずれにしても、日ごろから血糖値を良好に保てば、糖尿病の合併症にならないのはもちろん、新型コロナの重症化も予防できるということを理解いただきたいと思います。

 先ほど紹介した質問にあった「新型コロナが重症化しにくくなる糖尿病治療薬」で…

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岐阜大学糖尿病・内分泌代謝内科学教授

やべ・だいすけ 1973年生まれ。98年京都大学医学部卒業、2003年テキサス大学大学院修了。関西電力病院糖尿病・内分泌・代謝センター部長、関西電力医学研究所副所長、京都大学医学研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学特定准教授などを歴任し、18年から岐阜大学医学系研究科糖尿病・内分泌代謝内科学、膠原病・免疫内科学教授。岐阜大学病院では副病院長や医療情報部長、国際医療センター長を務める。 糖尿病や肥満症、栄養が専門。糖尿病や肥満症の予防、治療として注目される「食べる順番」や食習慣と薬物療法の関係性など、食事療法を中心に臨床研究を展開する。血糖値をコントロールするインスリンを分泌する膵ベータ細胞、インスリン分泌を促す「インクレチン」という物質の基礎研究にも従事。日本糖尿病協会の活動を通して、糖尿病の正しい知識の普及啓発や糖尿病教育・支援にたずさわる人材育成、糖尿病の重症化を防ぐ地域連携にも精力的に取り組む。