教員の多忙については広く知られるようになりましたが、単に時間の問題にとどまりません。しかし、なかなか改善が進まないのは、「教員の仕事」についての誤解があるからかもしれない、と筆者はいいます。今回は、教員の多様で複雑で密度の濃い、日々の仕事について掘り下げます。

教員には三つの役割がある

 新型コロナウイルス禍における子どもや教員にとって、マスクの装着と消毒が学校のルーティンになって3年目になる。「エッセンシャルワーカー」という言葉が使われ、医療や介護・保育・教育に関わる労働者がそれに該当する。「3密回避」をしたら仕事にならない、社会の維持にとって必要で不可欠な労働者だ。リモートワークやAI(人工知能)などデジタル機器で代用できない、専門的な対人ケア・サービス業と言ってよい。

 学校の教員もそのエッセンシャルワーカーに該当する。学校の役割には、子どもを預かること(託児機能)、学力をつけること(学習機能)、そして一人前になって社会生活が送れるようにすること(社会準備機能)という、おおまかに三つの役割がある。

 しかし、その役割を担う教員の労働環境は劣悪・過酷である。「改善すべきである」という声が官民から出ているのに,改善がなかなか進まないのは、教員の仕事というものへの誤解があるからではないだろうか。しばらく、「教員の多忙」と「教員の仕事とは何か」という問題を取り上げて考えてみたい。その手始めに、「先生は授業の前も大変だ」ということについて考えてみる。

授業が始まる前も大変

 先生「はーい、みんな教科書の12ページ見てくれますか?」

 子ども「何の教科書ですか?」

 先生「あのさ、時間割見てよ、国語だよ。前の算数の時間の終わりに、言ったよね『国語の準備をしてから、遊びに行ってね』って」

 子ども「先生、教科書、忘れちゃったから友達に見せてもらっていいですか?」

 先生「あのさ、今、コロナだから、くっつくのダメだよ。しょうがないなあ、じゃあ、先生の教科書、貸すよ……」

 子ども「あの、ノートも忘れちゃったあ」

 先生「そっか、教科書忘れた人? ああ、3人か。じゃあ、今から職員室行って、そこをコピーしてくるから、ちょっと待っててね……」

 子ども「それまで、なにやってればいいですか?」

 先生「どこでもいいから、教科書を読んでてくれる……」

 と、まあ、こんな調子で毎日授業を始めることが多い。もちろん、朝の会があれば、子どもたちに連絡事項を伝えなければならない。運動場の使い方に関する注意から、「マスクを忘れないようにしよう」などの呼びかけ、「家庭訪問日の希望票」など個別に回収するものもある。

 さらに、「席替えはいつやるのですか?」「○子さんと○子さんがケンカしていました」「今日は雨ですけど、体育はやるんですか?」など、低学年になれば、フッと思いついたことでも平気で質問する。「ちょっと、それさ後でもいい?」と教師が言えば「あ、無視した!」と言い放つ子もいる。ごく、一例だが、こうした、子どもたちからのいろいろな訴えや質問にも対応する。細かな対応だが、怠るとときどき面倒なことに発展するので気をつかう。

 最近では、「先生、タブレットが開かない……」「充電忘れたあ」などGIGAスクール的な多忙も加わった。

 「学校は勉強するところだから、先生は勉強を教えるのが仕事である」というならシンプルでよいが、現実はそんなことにはな…

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小学校非常勤講師、雑誌『お・は』編集人

おかざき・まさる 1952年、愛知県生まれ。愛知教育大学保健体育科卒業。小学校教員(40年以上)を経て、現在は非常勤講師。学校・子育てマガジン「おそい・はやい・ひくい・たかい」(ジャパンマシニスト社)編集人。「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」(同上)編集協力人。2020年8月から動画投稿サイト「ユーチューブ」で15分授業「おかざき学級」https://japama.jp/okazaki_class/ 公開中。近著に「子どもってワケわからん!」「学校目線。」など。