Dr.中川のがんのひみつ

「標準治療」とは最善・最良の治療

中川 恵一・東大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授
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 あるスポーツ選手が2月末、ステージ4の胃がんで、脳にも転移があることを公表しました。その後、インスタグラムを更新し、自身の治療費を支援するためのクラウドファンディングが立ち上がったことを報告し、協力を呼びかけています。

 寄付を呼びかけるメッセージには、保険適用外の治療になれば治療費も膨大になるとの内容が書かれています。ここでは改めて、「保険適用」とは何か考えたいと思います。

 がんを正しく治療するためには、健康保険が適用される「標準治療」を受けることがベストです。標準治療と聞くと、「普通の治療」「並の治療」のように思えるかもしれませんが、現時点での「最善・最良の治療」といえます。

 そして、わが国の国民皆保険制度のもとでは、標準治療は、原則として、保険医療に組み込まれます。自己負担の上限を定める「高額療養費制度」も使えますから、最善・最良の治療をリーズナブルな費用で受けることができるわけです。

 がん免疫治療薬「オプジーボ」をはじめとする超高額な薬物が目白押しですから、財政面の心配はありますが、日本の医療制度は正直、すばらしいと思います。

 一方で、有効性が証明されていない免疫療法やエセ科学的な「治療」が「自由診療」の名の下に行われているのは大きな問題です。

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中川 恵一

東大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1985年東京大医学部卒。スイス Paul Sherrer Instituteへ客員研究員として留学後、同大医学部付属病院放射線科助手などを経て、2021年4月から同大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。同病院放射線治療部門長も兼任している。がん対策推進協議会の委員や、厚生労働省の委託事業「がん対策推進企業アクション」議長、がん教育検討委員会の委員などを務めた。著書に「ドクター中川の〝がんを知る〟」(毎日新聞出版)、「がん専門医が、がんになって分かった大切なこと」(海竜社)、「知っておきたい『がん講座』 リスクを減らす行動学」(日本経済新聞出版社)などがある。