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新型コロナ感染者が激減しない「第6波」 私が考える四つの理由

山本佳奈・ナビタスクリニック内科医、医学博士
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東京で桜の満開宣言が出された中、上野公園で花見を楽しむ人たち。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、同公園では宴席禁止や一方通行などの対応が取られた=東京都台東区で2022年3月27日午後1時51分、前田梨里子撮影
東京で桜の満開宣言が出された中、上野公園で花見を楽しむ人たち。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、同公園では宴席禁止や一方通行などの対応が取られた=東京都台東区で2022年3月27日午後1時51分、前田梨里子撮影

 新型コロナウイルスの新規感染者数の推移が今までにない動きを見せています。これまで流行の「波」はピークアウト後、1カ月ほどたてばその数を大きく減らしてきましたが、「第6波」はそれとは大きく異なっています。規制を緩めたアメリカでは感染者が増える傾向もみられますが、何が起きているのでしょうか。クリニックで多くのコロナ患者を診察している内科医の山本佳奈さんが、その理由について考えてみました。

マスク着けず感染拡大?

 「こちらは、もう普通の生活。新型コロナウイルスはいなくなってはいないけど、感染して重症化したり、死亡したりするのは、ワクチンを接種していない人の自己責任だと思っている」

 そう話すのは、アメリカのカリフォルニア州に住む友人です。「コロナ(の感染状況)はどうなの?」と聞いても、「もう落ち着いたね。ちらほらコロナになる人が社内でもいるけれど、症状が改善したら復帰する。ただそれだけだよ」と言います。

 アメリカ疾病対策センター(CDC)は2月下旬にマスク着用の指針を変更し、感染が落ち着いている地域では屋内での着用を求めないことにしました。現在、ほぼ全ての地域で屋内マスクが不要となっており、「マスクを着けている人をほとんど見かけなくなった。たまにカフェやジムで着けている人を見かけるくらいだよ」とこの友人も言います。

 アメリカではコロナの変異株「オミクロン株」の感染拡大に伴い、新規感染者数はピーク時(2022年1月15日)に人口100万人あたり2426人にまでなりましたが、その後は急激に減少しました。しかし、CDCが4月2日の時点で、オミクロン株の従来型「BA.1」と比べて感染力が強いとされる派生型「BA.2」が72%を占め、前週(57%)から増加していると推計していることや、人口100万人あたりの新規感染者数が4月4日の79人から108人へと増える傾向にあることから、アメリカ国内では再び感染が拡大するのではないかと懸念されているようです。

3月末に落ち着くと思ったが

 私の勤務するクリニックでは、コロナの流行が始まった当初から発熱を認めている方をお断りすることなく診療しています。オミクロン株の感染が急拡大した時は、発熱やのどの痛み、せきなどを訴える患者さんの数が日に日に増え、PCR検査をした症例のうち6割ほどで陽性を認めるまでになりました。年明けから始まった第6波のピーク時は、「今回こそは私も感染してしまうかもしれない」と覚悟したほどでした。

 これまでの日常診療を通じて私は、風邪症状を主に訴え受診される患者さんが減ってきたなと思うと、遠くないうちに政府が公表するコロナ新規感染者の報告数が減少し、流行の「波」が収まってコロナ疑いの患者さんもゼロに近くなるまで減少することを経験として学んできました。2月中旬になり、こうした傾向が見られたため、私は第6波は3月末で落ち着くだろうと予想していました。

 しかしながら、今回の第6波はどうも違っているようです。厚生労働省の資料によると、全国の新規感染者数(過去7日間平均)はゴールデンウイーク直前の4月28日時点でまだ約4万人いて、最も多かった2月5日の8万7486人からは減少していますが、3月下旬の水準とあまり変わりません。ピークアウトしたとはいえ、全国の新規感染者数がほぼ横ばいで推移しているのと同様に、風邪症状を認めて内科外来を受診される方も、ピーク時よりはかなり減ったものの、その数もほぼ横ばいの状態が続いています。PCR検査をしても陽性者が出ない日はなく、検査を受けた人の3割から5割弱で陽性となっています。

海外と比べて遅れた追加接種

 なぜこんなことが起きているのでしょうか。私は主に四つの理由があるのではないかと考えています。一つ目の理由は、追…

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山本佳奈

ナビタスクリニック内科医、医学博士

やまもと・かな 1989年生まれ。滋賀県出身。医師・医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒、2022年東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒。南相馬市立総合病院(福島県)での勤務を経て、現在、ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員を務める。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)がある。