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ヤングケアラー 「学校や大人にしてもらいたいこと」が特にないと答える理由

渡部達也・NPO法人ゆめ・まち・ねっと代表
 
 

 病気や障がいなどを抱える家族の介護や幼いきょうだいの世話をしている子どもたち。こうした「ヤングケアラー」について、国が4月に公表した全国の公立校に通う小学6年生を対象とした初の実態調査結果で、6.5%(15人に1人)の子どもがケアに追われている実態が明らかになりました。静岡県富士市で子どもたちの居場所作りに取り組んでいるNPO法人「ゆめ・まち・ねっと」の渡部達也さんは、調査結果には気になることがあるといいます。ヤングケアラーと呼ばれる子どもたちに対し、周りの大人はどのような関わりが求められているのでしょうか? 渡部さんが出会ってきたヤングケアラーとのエピソードをもとにつづります。

妻と“ママ友”同士のような会話をする小学4年生

 「ねえ、みっきぃ。最近、洗濯物、乾かなくて困るよね?」

 ハヅキが今にも泣き出しそうな梅雨空を見上げて、僕の妻に同意を求めます。

 「そうねえ。生乾きだと匂いも気になるしね」

 「そうそう。うちのTシャツも着た時、臭いんだよ(笑い)」

 「かといって、消臭スプレーとか使いたくないしね」

 「うんうん。うち、高くて買えないしね(笑い)」

 子どもたちに自由な外遊びの環境を提供している「冒険遊び場たごっこパーク」で、小学4年のハヅキと妻がママ友のような会話を交わしていました。屈託のない笑顔で遊ぶ姿が印象的なハヅキは、古い借家に住んでいました。母親は、重い障がいのある妹の育児に追われつつも、水商売でなんとか母子家庭の生活をやり繰りしていました。

 ハヅキは、夕方、母親が出かけた後の妹の面倒だけでなく、炊事や洗濯も担っていました。子どもたちとのキャンプでは、料理長のような働きをしてくれました。

 「セイヤ、ジャガイモの皮はこれ(ピーラー)使うといいよ」

 そう年上のセイヤに助言しつつ、自分は包丁で次々と器用にむいていきます。

 「アヤカ、最初にここをコンコンってやって潰すとむきやすくなるから」

 年下のアヤカにはゆで卵の殻のむき方のコツを伝えます。

 僕と妻は時々、自宅を訪問していました。困窮する生活を少しでも楽にしてあげられたらと、食料品や日用品を差し入れるためです。玄関から部屋に続く廊下は床がほとんど見えない状態で、ハヅキも母親も掃除にまでは手が回らない様子がうかがわれました。

幼いきょうだいの夕飯を用意する中学2年生

 「たっちゃん、そろそろ帰るよ」

 精緻な戦艦のイラストをサラサラと描いていた中学2年のツヨシが、夕方5時の鐘が鳴ると、鉛筆を筆箱にしまいながら僕にそう告げました。

 「ごはん、食べていけばいいのに」

 この日は、放課後の子どもたちの居場所「おもしろ荘」で週1回開いている「0円こども食堂」の日でした。

 「ありがとう。でも、弟と妹の面倒、見なくちゃいけないから」

 「今日も父ちゃん、母ちゃん、遅いのか?」

 「うん。多分ね(笑い)」

 「大変だね」

 「まあね(笑い)」

 いつものことだから心配しないで――。そんなことを伝えるかのような薄い笑みを浮かべます。

 ツヨシが中学生になった頃、両親が不仲であること、そして、どちらもパチンコに行ったり、飲みに行ったりで、夜遅くまで帰って来ないことなどを聞かされました。小学校低学年の弟と園児の妹の面倒を見ながら、簡単な夕飯を作っては一緒に食べて、親の帰りを待つことが多いと教えてくれました。

 「これ、今日のおかずを詰めたから持ってって」

 「ありがとう。助かるよ」

 こども食堂用に作ったおかずを妻がツヨシに手渡しながら、見送りました。

1日平均3~4時間をケアにあてる子ども…

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NPO法人ゆめ・まち・ねっと代表

わたなべ・たつや 1965年静岡県三島市生まれ。茨城大卒。88年静岡県庁入庁。児童相談所ケースワーカーや大規模公園「富士山こどもの国」の設立・運営、国体および全国障害者スポーツ大会の広報などに携わる。「まちづくり」という夢を追い求め、2004年に16年余り勤めた県庁を退職。同県富士市に移住し、同年秋、妻・美樹と共にNPO法人「ゆめ・まち・ねっと」を設立。空き店舗を活用した放課後の居場所「おもしろ荘」や地元の公園と川で自由な遊びを楽しむ「冒険遊び場たごっこパーク」、「0円こども食堂」などの開催を通じて、子どもの遊び場づくり・若者の居場所づくりに取り組む。里親として虐待を受けた子どもの社会的養育にもかかわっている。愛媛県松前町が創設し「義農精神」(利他の精神)を体現する活動に取り組む個人・団体を表彰する第1回「義農大賞」など受賞多数。 著書に「子どもたちへのまなざし-心情を想像し合い 積み重ねてきた日常 切れ目のない関係性-」(エイデル研究所)。