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男性ホルモンがなくても更年期の症状が起きないわけ 男性更年期の真実/4  

石蔵文信・大阪大学招へい教授
 
 

 男性ホルモンが担う主な役割は、筋肉を強くすることと血を作る(造血)作用です。精神面では、「がんばるぞ」というような気持ちを高めますが、時に攻撃性が高まることもあります。

前立腺がんでホルモン療法を選択

 これまで私の体の中には、いつも男性ホルモンがあったので、その作用を強く意識することはあまりありませんでした。しかし、2年前、あまりにも体調が悪かったため精密検査を受けた結果、前立腺がんが見つかり、しかも全身の骨に転移していることが分かったのです。

 前立腺がんの指標となる血液中のPSA(前立腺特異抗原)の値は、5を超えると「前立腺がんを疑って検査をすべきだ」とされていますが、その時の私の値は、2000を超えていました。「さすがにこの状態では長生きできない」と覚悟を決めました。

 前立腺がんの治療には、手術や放射線などさまざまな方法がありますが、全身に転移している場合は、「ホルモン療法」が第一選択となります。前立腺がんは男性ホルモンがあると勢いがつきますので、男性ホルモンをなくしてしまう治療を「ホルモン療法」と呼びます。私の場合は、脳に作用する注射を3カ月に1回打ち、現在は体内に男性ホルモンがほとんどない状況になっています。

 男性ホルモンがなくなれば、がんの勢いも一時的に弱まります。しかし、がんはいつまでもその状態でいてくれるわけではなく、男性ホルモンがなくても次第に勢いを取り戻します。これを「去勢抵抗性」といいます。私の場合も、昨年半ばからPSAが徐々に上がってきました。

 そこで第二の治療である抗がん剤投与に切り替えました。その薬の副作用で昨年末にかなり苦しんだものの、その後、幸いにも遺伝子をターゲットにする薬に出合えたことは、以前のもう一つの連載で紹介しました。現在は、ある程度小康状態になっているといえます。

筋力が徐々に衰え、貧血も

 さて、男性ホルモンがなくなったといっても、当初は私の体にあまり大きな変化はありませんでした。しかし、1年ほどたってから徐々に筋力が衰えてきました。これはゴルフやテニスをやっていて非常に感じます。ゴルフでは、以前のドライバーでは220ヤードぐらい飛んでいたのですが、今や160ヤードぐらいしか飛ばなくなりました。テニスもサービスの球が届かず、女性用のラケットに代えて、ようやく何とかなるようになりました。

 このように、今でははっきりと筋力の衰えを自覚しています。さらに貧血がひどくなってきました。…

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大阪大学招へい教授

いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。