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「お母さんを見捨てられない」 そう語った女子高生の胸の内

青山さくら・児童相談支援専門職員
 
 

 「お父さんに会いたい」。児童相談所(ジソウ)で働く青山さくらさんが現場の思いをつづる連載で今回登場するのは、今年高校3年生になる17歳の女性、Qさんです。父のドメスティックバイオレンス(DV)から逃げて、1年ほど前から母子生活支援施設(※1)で暮らしている彼女の本心とは?

父母の争いに巻き込まれた子どもの気持ち

 Qさんは、東アジア出身の父と日本人の母のあいだに生まれた。彼女の母は、医療系の出版物の翻訳の仕事をしており、豊かではないが2人はつましく生活しているようだった。

 ある日、Qさんが通う公立高校の教員から、「この子の話を聞いてやってください」と市役所の子ども家庭課に相談があった。子ども家庭課の職員とQさんの面接に、私も同席して話を聞いた。「お母さんは外国語大学を出ていて優秀なんだよ」と自慢そうな笑顔が印象的だった。

 だが、Qさんは「施設を出たい。お母さんと『あんな狭い部屋』にいたら、ほんとうに息が詰まるし、イライラしてるお母さんの顔も見たくない。お母さんと離れて、ひとり暮らしがしたい。働きながら高校を卒業したい」と一気に語った。

 「お母さんを殴ったお父さんは嫌いだけど、でも時々会いたい。お母さんはお父さんの悪口ばかり。お父さんにもやさしいところ、あるのに……」。Qさんはお父さんの住まいを知っているようだが、「内緒で会いに行ったら、お母さんが怒るだろうし、お母さんの悲しむ顔も見たくない」と言い、こう続けた。

 「結局、私、損してる。施設に入るために友だちと離れなきゃいけなかったし、今の高校に編入できたけど偏差値めちゃ落ちたし、学校つまんないし、女の子たちのグループに入れてもらえないし、ひとりで弁当食べてるし。施設に入ってることだれにも知られたくないし、同情されんのイヤだし、あんまりお金がないから好きな部活にも入れないし……」

 前の学校では弓道部だったが、…

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児童相談支援専門職員

「青山さくら」はペンネーム。複数の児童相談所で児童福祉司として勤務した後退職し、現在は自治体などで子ども虐待関連の仕事をしている。「ジソウのお仕事」は隔月刊誌「くらしと教育をつなぐWe」(フェミックス)で2009年4月から連載。過去の連載の一部に、川松亮・明星大学常勤教授の解説を加えた「ジソウのお仕事―50の物語(ショートストーリー)で考える子ども虐待と児童相談所」(フェミックス)を20年1月刊行。【データ改訂版】を2021年3月に発行した。絵・中畝治子