人生なりゆき~シニアのための楽しい生き方・逝き方

がんと認知症で「死にゆく過程」はどう違うのか?

石蔵文信・大阪大学招へい教授
  • 文字
  • 印刷
 
 

 突然死や自殺などを除いては、病気によって死に向かっていく様子が違ってきます。今回は、日本人の3分の1がこのために亡くなっているがんと、今後患者が急増するとみられる認知症の亡くなり方について考えてみたいと思います。

がんは亡くなる直前まで日常生活が可能

 がんは、図にあるように亡くなる1~2カ月くらい前までは、いろんなしんどい症状がありつつも、自分のことは自分でできるようです。

 2018年に大腸がんで亡くなられたプロ野球・広島カープの「鉄人」と呼ばれた衣笠祥雄さんは、死の4日前まで野球の解説をされていたようです。柔道家の古賀稔彦さんも、亡くなられる1カ月ぐらい前まで活躍されていたようです。このように、元気ではないにしろ、がんの患者さんは最後の1~2カ月くらいまでは、日常の活動はかなりできるようですし、周囲とのコミュニケーションも十分可能です。

 一方、認知症の場合は、私の両親がたどったように、いつ発症したかも定かではなく、体力や思考が徐々に衰えていきます。一人で活動することができなくなれば、家族が介護するか、施設に入らざるを得なくなります。よく「家族には迷惑をかけたくないが、施設にも入りたくない」という高齢者がいますが、本当に家族に迷惑をかけたくなければ施設に入ることをおすすめします。

 最初は簡単な日常生活はできると思いますが、次第に体力が弱り、寝たきりになって食事ができなくなります。図のように、一定のスピードで日常生活を送る力が衰えていきます。「平穏死」(終末期に過剰な医療をしないで死を迎えること)を望むなら、そこで延命のための栄養補給などはお断りした方が良いと思います。

 そのような決断について、家族が「見捨てるようでつらい」と考えて、点滴や栄養チューブ、そして胃ろうなどの処置をすると、寝たきり生活が数年間に及ぶこともあります。その方がいつ亡くなるかは予想がつかない状況になります。

死の1カ月前に表れる症状

 心療内科医で緩和ケアにもくわしい奈良県立医科大の四宮敏章先生は、死の1カ月前から急に悪化することの多い症状として、次のようなものを挙げます。

1 全般的な活動性の低下

2 食欲の低下

3 息苦しさの増加

4 浮腫の増加

5 意識の障害

 このような症状が出始めた時に、延命をするのか、平穏死を選ぶのか、しっかり考えた方が良いでしょう。確かに、病院へ搬送し、栄養補給を受けた方が延命になるかもしれませんが、それだけ苦しむ時間が長くなるとも言えます。

 死ぬ直前に表れる兆候は、次のようなものです。

この記事は有料記事です。

残り377文字(全文1432文字)

石蔵文信

大阪大学招へい教授

いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。