理由を探る認知症ケア

認知症の「収集癖」? 女性が介護施設でティッシュを集めるわけ

ペホス・認知症ケアアドバイザー
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 脳梗塞(こうそく)をきっかけに認知症を発症し、介護施設に入所した80代女性のYさん。入所して1カ月がたったころ、施設の職員がYさんのズボンのポケットにティッシュがたくさん詰め込まれているのに気付きました。どうやら自分で食堂にあるティッシュを集めていたようです。職員が注意してもYさんはやめず、施設の事務長に「認知症からくる『収集癖』」と指摘されます。一見すると無意味に思える行為にも意味があるのではないか――。困り果てた職員から相談を受けた認知症ケアアドバイザーのペホスさんはそう考え、Yさんの行動の背景やきっかけを探っていきます。すると、施設の利用者がやりたいことを自由にできない状況が浮かび上がってきました。ペホスさんが解説します。

認知症で1人暮らしが難しくなり、介護施設に

 Yさん(80代・女性)には50年、連れ添ってきた夫がいましたが、8年前に亡くなり、落ち込んでいました。Yさんも夫も一人っ子で、子どももいなかったので、身寄りがなく、その悲しみを癒やす相手がいなかったそうです。

 しかし、夫の会社の部下の方やご近所の方が心配し、よく家を訪ねてきてくれたそうです。「悲しかったけど、みなさんのおかげで乗り越えられたのよ」と話していました。

 そんなYさんが半年前、買い物に向かう途中に脳梗塞で倒れ、救急搬送されました。左半身まひとなったYさんは、リハビリができる病院や介護老人保健施設でリハビリに取り組み、車いすを自分で操作して移動できるくらいまでに回復しました。

 脳梗塞による認知症で、車いすのブレーキをかけ忘れたり、服の着方がときどき分からなくなったりすることもありました。Yさん自身も自宅での1人暮らしは難しいと思っていたため、介護施設に入所することになりました。

たくさんのティッシュがYさんのポケットに

 介護施設では個室でしたし、車いすで移動するYさんにとって、段差のない施設は移動がしやすく、とても気に入っていました。食事も歯磨きも自分でできましたが、車いすからベッドやトイレの便座に乗り移る際には、ブレーキをかけ忘れることがありました。職員が見守る必要があり、その都度、職員が付き添っていました。

 入所して1カ月がたったころ、…

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ペホス

認知症ケアアドバイザー

ペ・ホス(裵鎬洙) 1973年生まれ、兵庫県在住。大学卒業後、訪問入浴サービスを手がける民間会社に入社。その後、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、訪問介護、介護老人保健施設などで相談業務に従事。コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にて、コーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、かかわる人の内面の「あり方」が、“人”や“場”に与える影響の大きさを実感。それらの経験を元に現在、「認知症ケアアドバイザー」「メンタルコーチ」「研修講師」として、介護に携わるさまざまな立場の人に、知識や技術だけでなく「あり方」の大切さの発見を促す研修やコーチングセッションを提供している。著書に「理由を探る認知症ケア 関わり方が180度変わる本」。介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員。ミカタプラス代表。→→→個別の相談をご希望の方はこちら