
新型コロナウイルス感染症は「おさまった」とはいえない状況ですが、それでも、行動制限なしのゴールデンウイークをなんとか乗り切りました。全国の1日の新規感染者数は5月16日現在、連休前に比べて横ばいか、わずかに減ったくらいです。感染した人の死亡率が下がってきたこともあり「マスクを外せる場面もある」という声が、医療関係者からも出始めています。とはいえ私自身は、新型コロナ感染のリスクに常にさらされている医師であり、現段階では、たとえばマスクを外して電車に乗ることはできません。日本政府もまだ慎重です。その一方で、米国や欧州ではマスク着用義務がどんどん緩んできています。今回は「日本でのマスク着用はいつまで続くのか」について考えてみたいと思います。
米政府は要請を緩和
米大リーグの試合をテレビやインターネットで見ると、マスクをしていない観客が目立ちます。一方、日本のプロ野球を球場で観戦する際はまだ、球場がマスク着用を呼びかけています(たとえば東京ドームの呼びかけはこちらです)。国によってだいぶ違うものですね。
そこで、米国と日本の感染状況をみると、人口100万人あたりでみた1日の新規感染者数(1週間平均)は、5月14日現在、下記のようになっています。
・米国 249人
・日本 316人
傾向としては、日本は減少か横ばいで、米国は増加傾向です。
このような状況の米国ですが、マスク着用をどこまで推奨するかは現在、郡(County)ごとに異なっています。具体的な推奨内容はその郡の感染状況によって決まります。なお郡は、米国で州の下にある行政単位です。全米で3000あまりの郡があります。
米疾病対…
この記事は有料記事です。
残り2813文字(全文3511文字)
志賀隆
国際医療福祉大医学部救急医学主任教授(同大成田病院救急科部長)
しが・たかし 1975年、埼玉県生まれ。2001年、千葉大学医学部卒業。学生時代より総合診療・救急を志し、米国メイヨー・クリニックでの救急研修を経てハーバード大学マサチューセッツ総合病院で指導医を務めた救急医療のスペシャリスト。東京ベイ・浦安市川医療センター救急科部長などを経て20年6月から国際医療福祉大学医学部救急医学教授、21年4月から主任教授(同大成田病院救急科部長)。安全な救急医療体制の構築、国際競争力を産み出す人材育成、ヘルスリテラシーの向上を重視し、日々活動している。「考えるER」(シービーアール、共著)、「実践 シミュレーション教育」(メディカルサイエンスインターナショナル、監修・共著)、「医師人生は初期研修で決まる!って知ってた?」(メディカルサイエンス)など、救急や医学教育関連の著書・論文多数。