実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

新型コロナ 取り残される「免疫能が低下した人たち」

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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3年ぶりに開催され、総おどりでフィナーレを迎えた博多どんたく港まつり=福岡市中央区で2022年5月4日午後7時3分、津村豊和撮影
3年ぶりに開催され、総おどりでフィナーレを迎えた博多どんたく港まつり=福岡市中央区で2022年5月4日午後7時3分、津村豊和撮影

 新型コロナウイルス感染症はすでに終わった、という雰囲気が強くなってきています。日々新聞紙上で発表される感染者数をみていると、「まだまだ新型コロナは終わっていない」と感じられますが、患者さんの言動に注意していると、私の肌感覚としては世の中の多くの人がすでに、新型コロナは過去のものだと認識しています。それは若者だけであり高齢者にとっては依然として恐怖の病なのでは?とみる向きもあるでしょうが、その高齢者も少しずつ変化してきている印象があります。それでもやはり、世の中には新型コロナを恐れる人たちが残ります。さまざまな理由で体の免疫能が弱まり、ワクチン接種を受けても感染を防げない人たちです。今回はその話をしたいと思います。

「悔いはない」と孫を預かった高齢男性

 先日、70代のある男性の患者さんから「娘から頼まれて孫を預かったんです。幼稚園が(新型)コロナ(の感染者が出たせい)で休みやったみたいで……」と言われて驚きました。この男性は胃がんの手術を受けていて、そのときに脾臓(ひぞう)を取っています。脾臓摘出と新型コロナ重症化の直接の関係を調べた研究は見たことがありませんが、一般に脾臓は免疫をつかさどる重要な臓器であり、脾臓摘出者は感染症に対して弱くなります。つまり、70代で脾臓摘出をしているこの男性は新型コロナの重症化リスクが高いのです。

 その男性が、新型コロナで休園となった幼稚園に通うお孫さんを預かるとは……。お孫さんが無症状であったとしても感染の可能性は否定できません。無症状のお孫さんからこの男性に感染して男性は重症化、というリスクを考えなければなりません。しかし、男性は「怖くない」と言います。「あきらかに新型コロナやったら私も考えますけどね。ワクチンは3回(の接種を受け)終わっているし、多少のリスクは背負わなければ何もできません。もしも新型コロナに感染して死んだとしても、それが孫からやったら悔いはありません」。そこまで言われるのならばその考えを尊重すべきでしょう。

 この男性以外にも、「ある程度の予防をしてそれで感染するのは仕方がない…

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト 無料メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中。