ボストン発 ウェルエイジング実践術

新型コロナ 集中治療を受けた患者は「認知機能が20年分低下」

大西睦子・内科医
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マスクをつけて銀座を歩く人たち=東京都中央区で2022年5月19日午後3時29分、北山夏帆撮影
マスクをつけて銀座を歩く人たち=東京都中央区で2022年5月19日午後3時29分、北山夏帆撮影

 新型コロナウイルス感染症の後遺症で認知障害が起きると、その程度は、人によってはかなり深刻であることが、最近の研究で分かってきました。新型コロナで重症になり、集中治療を受けた患者46人を発症から6カ月後に調べたら、認知機能が下がっており、その低下ぶりは健常な50歳の人が70歳にまで年を取ったのと同じくらいだった。この低下は、よくても緩やかにしか回復しない。こんな論文を英国の研究者たちが、英医学誌「ランセット」の今年5月号に発表したのです。著者たちは論文とは別の寄稿文で、認知機能の低下ぶりを「知能指数(IQ)の10ポイント低下」とも表現しています。著者の一人である英インペリアル・カレッジ・ロンドン脳科学科のアダム・ハンプシャー教授は、インターネット上のニュースサイト「ユーロニュース」で、「イングランド(英国の一部で人口約5700万人)だけでも約4万人が新型コロナで集中治療を受けました。さらに多くの人が、入院はしなかったものの重い病状だったでしょう。これは、何カ月もたってもまだ認知機能の問題を経験している人がたくさんいることを意味します。このような人々を助けるために何ができるかを早急に検討する必要があります」と語りました。日本でも、同じような問題に苦しんでいる患者さんがいます。そこで、今回はこの論文などを紹介し、新型コロナによる認知機能障害についてわかってきたことをお伝えします。

最初に重症だった人ほど認知障害も重い

 新型コロナは、認知機能やメンタルヘルスに持続的な問題を起こすことがあります。これまでの調査や研究によると、感染から数カ月たった患者に出ている症状としては、次のようなものがあります。

 ・疲労感

 ・「ブレイン・フォグ」(脳の霧)と呼ばれる認知障害。これは、頭にモヤがかかったようにぼんやりしてしまい、考えたり集中したりするのが難しくなる状態です。

 ・言いたい言葉が頭の…

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大西睦子

内科医

おおにし・むつこ 内科医師、米国ボストン在住、医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年4月から13年12月末まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員として、日米共同研究を進めている。著書に、「カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側」(ダイヤモンド社)、「『カロリーゼロ』はかえって太る!」(講談社+α新書)、「健康でいたければ『それ』は食べるな」(朝日新聞出版)。