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移植医療の「世界初」は「偉業」といえるのか

京都大学病院で行われた新型コロナウイルスによる肺障害患者への世界初の生体肺移植手術=京都大学病院提供
京都大学病院で行われた新型コロナウイルスによる肺障害患者への世界初の生体肺移植手術=京都大学病院提供

 新型コロナウイルス感染症の流行が続く中、国内外で「世界初」の臓器移植医療が相次いで実施されました。もともと臓器提供数が少ない日本だけでなく、世界でも臓器提供を待ち続ける患者は多く、世界中で移植医療の新たな手法が研究されています。しかし、それらの医療にはさまざまな課題があります。世界の移植医療や生命倫理に詳しい生命倫理政策研究会共同代表の橳島次郎さんが、「世界初」が相次いだ裏事情と今後について解説します。

死後の提供者数はコロナ禍で大幅減

 日本で脳死者からの臓器提供を合法化した臓器移植法が1997年10月に施行され、今年で25年になる。当初は、本人の生前の書面での同意を必須としていたため、年10件程度しか提供者がなかった。2009年に、本人の書面での同意がなくても、家族の承諾だけで提供ができるよう法律が改正され、10年に施行された。その後、徐々に提供件数は増え、19年には脳死後臓器提供が97件に達した。しかし、その分、心停止後の提供数は減り、脳死と心停止後を合わせた死後の提供数は、25年前とほとんど変わっていない。

 さらに、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)の影響で、20年、21年は死後の臓器提供数は大幅に減少した(19年の126件が、20年は78件、21年79件だった)。今年は脳死者の提供数は持ち直しているが、日本はもともと世界で最も少ないレベルだったので、コロナ禍による提供減少は他国以上に深刻な影響をもたらしたといえる。その中、国内外で「世界初」の臓器移植が実施された。移植以外に治療法のない患者の命を救う医療だとされるが、どのように評価すべきか。慎重に検討したい。

生体肺移植で「世界初」の試み

 コロナ禍の日本における臓器移植で、「世界初」の試みが相次いで実施され、大きく報道された。

 まず21年4月、京都大学病院で、新型コロナにかかり重い肺障害を起こした患者に、2人の近親者の肺の一部を移植する生体肺移植が実施された。新型コロナ患者の治療に生体肺移植を行うのは世界初だという。しかし、世界に先駆けた日本の「偉業」と言えるかというと、そうではない。

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