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熱中症予防にスポーツ飲料毎日2本?! 「健康リテラシー」を育てるコツとは

金子至寿佳・高槻赤十字病院糖尿病・内分泌・代謝内科部長

 みなさん、「健康リテラシー」という言葉を知っていますか。健康を守るため、適正な情報を自ら適正にキャッチし、行動に移す力のことで、健康力は健康リテラシーそのものです。これまでも連載で、この健康リテラシーが十分に備わっていないことによって医療現場で起きているいろいろな問題事例を紹介してきました。日本は海外と比べて健康リテラシーが遅れているとも言われていますが、育てる「コツ」はあるのでしょうか。

健康リテラシーの有無で対応に大きな差

 まず、次のような事例から考えてみたいと思います。

 ▽スポーツ飲料を飲む時

・Aさん「スポーツ飲料の裏のラベル(栄養成分表示)を見てみよう。たんぱく質0グラム、脂質0グラム、炭水化物9.8グラム……か。炭水化物は『糖質』と『食物繊維』でできているって聞いたな。これは透き通った液体だから食物繊維は入っていないようだ。表示されている炭水化物は全て糖質か。それも飲むと甘い味がする! きっと砂糖やブドウ糖に違いない。『9.8グラム』は100ミリリットル当たりの量なので、500ミリリットルを1本飲むと全部で49グラム、つまりスティックシュガー(3グラム)16本分だ! うーん、今日は本当にこの飲み物を飲むべきなのかな。口を潤したいだけなのでお茶でもいいよね」

・Bさん「熱中症を予防しなきゃいけないから、スポーツ飲料を1日2本飲むことにしている。『健康を考えよう』みたいなことをテレビのコマーシャルでも言っていたしね。今1本飲んで、そして、もう1本は1時間後に飲もうっと。裏のラベルに小さい字が並んでいるけど、体に悪い物は入っていないだろうから、読まなくてもいっか」

 ▽塩分摂取について

・Aさん「私は血圧が高めになってきているので、先生から1日の塩分摂取量を6グラムにすることを提案されたんだ。今日のおかずは野菜炒めで、塩コショウの味つけになっている。漬物は多いと1食で2グラム以上もの塩分を取ってしまうから、食べるのは控えておこう。あれ、キムチもある。だけど、漬物と同じくらい塩分が入っているので、今日は食べるのはやめておこう。梅干しも漬物の一つだから、今度塩分が少ない食事の時に半分だけ食べることにしよう」

・Bさん「腎臓の機能が悪いから通院中で、医者からは『塩分を控えなさい』と言われています。だから、サケを食べる時は、塩分が多い塩ザケではなく、甘ザケを選んでいます。甘いというだけに、塩も入っておらず甘く感じるから、いくら食べても大丈夫ですよね」

 Aさんは健康リテラシーが備わっていますが、Bさんは残念ながら備わっていません。いずれも、私が実際に診察室で聞いた話です。

学校教育の場でこそ身につけるべし

 健康リテラシーは、健康にとって正しい行動を論理的に取るスキルを身につけることで高められます。大…

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高槻赤十字病院糖尿病・内分泌・代謝内科部長

かねこ・しずか 三重県出身。医学博士。糖尿病医療に長く携わる。日本糖尿病学会がまとめた「第4次 対糖尿病5カ年計画」の作成委員も務めた。日本内科学会認定医及び内科専門医・指導医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医・指導医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医・指導医、日本老年病学会認定老年病専門医・指導医。インスリンやインクレチン治療薬研究に関する論文を多数執筆。2010年ごろから、糖尿病診療のかたわら子どもへの健康教育の充実を目指す活動を始め、2015年からは小中学校で出前授業や大人向けの健康講座を展開している。