実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

梅毒 無料検査の対象に「自治体間格差」

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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 本連載で何度も取り上げてきた梅毒は、長期間無症状であることが多く、コンドームで防げないこともあり、気づかずに大勢に広がってしまっている感染症です。原因は「梅毒トレポネーマ」という細菌で、抗菌薬で適切な治療をすれば治る病気です。自然治癒もありえますが、長期間無治療でいると後遺症を残すこともありますし、他人にうつす恐れもあります。母親を通じて胎児に感染させてしまう、という心配もあります。この梅毒や、HIV(エイズウイルス)、B型肝炎ウイルス、あるいは新型コロナウイルスのように「無症状だけれども感染しているかもしれない」感染症に対しては、社会への蔓延(まんえん)を防ぐために、無料で検査をするのが望ましいと言えます。そして、感染している可能性がある人はだれもが無料で受けられるようにしなければ平等ではありません。実際、自治体によっては、梅毒やHIVの検査を無料で、そして検査を受ける人の身元を確認せずに匿名で行っています。ただし、その無料検査を希望しても拒否される人たちがいます。無料検査の実施に、一定の条件をつけている自治体もあるからです。私としては、各自治体がこうした条件をできるだけ緩和してほしい。そして、希望者はだれでもどこででも、無料検査を受けられるようになってほしい。こんな思いで今回の記事を書きました。

 実際に検査を拒否された患者さんを紹介しましょう(ただし、プライバシーの観点から少しアレンジを加えています)。

HIV感染者ですが性交渉してもうつしません

 その患者さんは20代の男性で、7年前にHIV感染が分かりました。現在は抗HIV薬の内服により数値も安定しており日常生活に健康上の問題はありません。薬の効果で血中にウイルスを検出できないレベルに保てているので、性行為をしても相手にHIVをうつしません。(これを「U=U」<ユー・イコールズ・ユーと読みます>と言います。参照:H…

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト 無料メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中。