
いよいよ夏本番。気温も湿度も高くなり、新型コロナウイルス感染対策の「マスク」について、いろいろと気になるところではないかと思います。「子どもはマスクを無理して着けなくて良いって聞いたけど、本当に大丈夫?」「園や学校によって対応が違うけど、本当のところ、何が正しいの?」。マスクの着用をめぐり、悩んでいる親御さんも多いのではないでしょうか。マスクの着用について、国内外の公的機関などが示した見解のポイントを整理しながら、子どものマスクに対する考え方を解説します。
「子どものマスクは無理をせず」は世界共通
マスクの着用について政府が5月に示した方針では「人との距離(2m以上を目安)が確保できる場合は着用する必要はない」とし、オミクロン株の流行で2月以降、一時的に着用を推奨してきた2歳以上の未就学児について、一律には求めないとしました。2歳未満の子どもには引き続き推奨していません。
子どもには、マスクの装着を強く推奨しない――。これは、国内外のいずれの機関の見解においても共通しているポイントです。
まず、世界保健機関(WHO)では、新型コロナの流行が始まった当初から「5歳以下の小児ではマスク装着の必要はない」としてきました。5歳以下では「適切にマスクを装着することができない可能性が高い」というのが理由です。
たしかに厳密な感染対策という点においては、マスクを装着している間はマスクを触ってはいけません。また、しっかりと鼻と口やあごを覆う必要があります。マスクを外す際にも、マスクの外側に触れないように注意深く外してすぐに廃棄し、手を洗う必要があります。これを5歳以下のお子さんがしっかり守るのは、かなり難しいですよね。なお6歳以上では、主に室内や換気が不十分な場所などでは、成人と同様にマスク装着が推奨されうるとしています。
また米疾病対策センター(CDC)とAAP(米国小児科学会)は、2歳未満の子どもにはマスク着用を求めないとの見解を示しています。CDCはさらにK-12の子ども(日本では、年長から高校3年生に該当)について、「(新型コロナの発生が低いレベルの地域であれば)室内でもマスク装着は必要ない」としています。
厚生労働省や日本小児科医会はこれらの見解を踏襲してきました。厚労省はもう少し踏み込んで小学生以上の子どもの室内活動に言及し、「屋内において、身体的距離が確保できて、会話をほとんど行わない場合(たとえば、個人で行う読書や調べたり考えたりする学習)は、マスク着用は必要ありません」としています。
「スポーツをする時」「暑い時」はマスクを装着しない
これから高温・多湿の季節。大人でもマスクを着けていると息苦しく、暑く感じられるときがありますよね。このような状況下でマスクを着けていると起こりうる危険は、具体的には以下のようなものがあります(日本小児科学会のウェブサイト参照)。
・呼吸が苦しくなる
・嘔吐(おうと)した場合に、窒息する可能…
この記事は有料記事です。
残り3273文字(全文4503文字)
小児科医/小児科オンライン所属医師
しらい・さよこ 小児科専門医。「小児科オンライン」所属医師。IPHI妊婦と子どもの睡眠コンサルタント(IPHI=International Parenting & Health Insutitute、育児に関するさまざまな資格を認定する米国の民間機関)。慶応大学医学部卒。東京都内のクリニックで感染症やアレルギーの外来診療をはじめ、乳幼児健診や予防接種を担当。2児の母としての経験を生かし、育児相談にも携わる。***小児科オンラインは、オンラインで小児科医に相談ができる事業です。姉妹サービスの「産婦人科オンライン」とともに、自治体や企業への導入を進めています。イオンの子育てアプリより無料で利用できます。詳細はこちら。