実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

世界的人気歌手を苦しめる「水痘・帯状疱疹ウイルス」

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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 世界的な人気を持つジャスティン・ビーバーさん(カナダのポップミュージシャン、歌手、俳優)の名前が本連載で登場するのは2回目となります。1回目は2016年のコラム「麻疹抗体が消える理由と『マスギャザリング』の恐怖」でした。このときは日本の千葉市・幕張メッセで開かれたビーバーさんのコンサート会場で、麻疹に感染した日本人男性の話を取り上げました。2回目となる今回は、ビーバーさん本人が苦しんでいる疾患の話です。

顔の半分が麻痺「ラムゼイハント症候群」

 ビーバーさんは今月11日、自らを映した動画をSNSに投稿し、顔が麻痺(まひ)して「ラムゼイハント症候群」という病気だと診断されたことを明らかにしました。そしてこの病気を理由に、米国での公演をキャンセルしました。

 この症候群は、医師国家試験にもよく出題される、医師にとってはおなじみの疾患ですが、頻度はそれほど多いわけではありません。おそらく医療従事者以外は「そんな病気聞いたことがない」という人の方が多いでしょう。今回はビーバーさんに襲いかかったというこの疾患を紹介し、原因の病原体となるウイルスについて、さらに新型コロナワクチンとの関連性について私見も交えて述べたいと思います。

 ラムゼイハント症候群の原因は、子供の頃にかかる水ぼうそうのウイルス(水痘・帯状疱疹<ほうしん>ウイルス)です。水ぼうそうは治りますが、ウイルスは神経の奥に残ります。そして大人になってから、何らかの理由で免疫能が低下したときに、奥でおとなしくしていたはずのウイルスが「再活性化」して、顔面神経に麻痺症状をもたらします。顔面神経は左右に一つずつあります。麻痺症状は必ず右…

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト 無料メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中。