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「無添加」の食品が買えなくなる? 表示規制と食品添加物への根強い誤解

成田崇信・管理栄養士
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食品添加物が含まれていることを示すラベル
食品添加物が含まれていることを示すラベル

 消費者庁は今年3月、「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を公表しました。このガイドラインが策定されたことで、企業から今後「無添加」の表示ができなくなるという声や、一部消費者団体からも商品を選ぶ際の判断基準が失われるおそれがあるとして、見直しを求める声が上がっています。なかには、今回のガイドラインは食品添加物を大量に使いたい大企業に配慮したものであるという意見まであるようです。消費者の権利を守るために策定されたにもかかわらず、このような意見が飛び交う背景には「食品添加物は危険なもの」という誤解があると考えられます。ガイドラインによって何が変わったのでしょうか。今回のガイドライン策定のねらいについて解説するとともに、食品添加物にまつわるさまざまな疑問に答えます。

ガイドラインの目的は?

 まず、最も重要なこととして、このガイドラインによって新たに何かが規制されることはない、という点を押さえておく必要があります。

 そもそも食品表示基準第9条では、表示すべき事項の内容と矛盾している用語や、商品の性質を誤解させてしまうような文字をパッケージに記載することを禁止しているのですが、その定義や説明が不十分であり、何が違反にあたるのか明確ではありませんでした。今までは「グレーゾーン」として扱っていたものを、消費者の利益を守るため、どのような表示が違反にあたるのかを分かりやすく示すために、ガイドラインが策定されました。

 つまり、表示内容と中身が一致していれば、今まで通りに「不使用」「無添加」と表示することは違反になりません。消費者の誤解や誤認を招くような表示について、今後はきちんと是正を促していきますよ、と消費者庁は述べています。経過措置として2年程度を目安に業者に表示の見直しを求めていくこととなっており、不適切な無添加表示がなくなることが期待されます。

内容と矛盾する「不使用表示」とは?

 ガイドラインでは消費者に誤解を与えるような表示について、以下の10の類型に分けて説明しています。各類型について簡単な説明を加えましたが、詳しい内容を知りたい人はガイドラインを参照してください。

※食品添加物の不使用表示に関するガイドライン(消費者庁)

類型1:単なる「無添加」の表示

 「無添加」とだけ記載されていて、何が無添加であるのかが明示されていない表示です。業者が意図している「無添加」と消費者がイメージしている「無添加」が異なる可能性があり、内容を誤認させるおそれがあります。

類型2:食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示

 例として、「人工甘味料不使用」という表示が該当します。食品表示基準では、食品添加物が天然物か化学的合成品かによって差を設けず、原則としてすべて表示することとしています。食品添加物を表示する場合、「人工」や「天然」、それに類似する表現を記載することは認めていません。

類型3:食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示

 その食品に使用することが認められていない食品添加物を「使用していない」と表示する場合です。入っていないのが当たり前の食品なのに、不使用表示により他の食品より優れている、または有利であると誤認させるおそれがあるためです。

類型4:同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示

 「保存料不使用」と表示している食品に、保存性を向上させる目的で保存料以外の食品添加物を使用しているケースが該当します。保存料不使用といいながら、細菌の増殖を抑えて保存性を保つpH調整剤を使用しているケースもありました。

類型5:同一機能・類似機能を持つ原材料を使用し…

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成田崇信

管理栄養士

なりた・たかのぶ 1975年東京生まれ。社会福祉法人で管理栄養士の仕事をするかたわら、主にブログ「とらねこ日誌」やSNSなどインターネット上で食と健康関連の情報を発信している。栄養学の妥当な知識に基づく食育書「新装版管理栄養士パパの親子の食育BOOK」(内外出版社)を執筆。共著に「各分野の専門家が伝える子どもを守るために知っておきたいこと」(メタモル出版)、監修として「子どもと野菜をなかよしにする図鑑 すごいぞ! やさいーズ」(オレンジページ)などに携わっている。