「○○をたくさん食べたら、がんが治った」。そんな言葉を目にしたことがある人は多いでしょう。しかし、ネット上にあふれる「がんに効く食品」の情報には、慎重にならなくてはいけません。それはなぜでしょうか。詳しく解説します。

治療の有効性を確認した食品はない

 「特定の食品をたくさん摂取することで、がんを治療する」という試みは、何十年も前から数多く行われてきました。とはいえ、それだけで明確にがんを抑制したとしっかりと確認されたことはいまだありません。そのため、ネットでの「効果がある」という話には注意が必要です。

 がん治療の効果には大きな個人差があります。治療効果に影響を与える因子も多数あり、同じ種類のがんに対して同じ治療をしていても、患者さんの年齢や体力などにより生存期間は異なります。

 少数の患者さんを対象に行われた研究結果だけで正確な評価を導くことはできません。多数の患者さんを、対象とする食品を摂取する群としない群にわけ、さまざまなその他の要素(条件)を正確に合わせた上で、厳密な比較を行う必要があるのです。

 ネットや書籍に多数登場する「がんに効く食品」には、十分な科学的根拠がないものばかりだと言えるでしょう。「○○を使ったら体調が良かった」「治療中に○○を食べたら症状が改善した」など、患者さん個人の感想を根拠としているものが多く、「複数の患者さんで試した研究で効果があった」と述べていても、それは明確な結論を導くためには不十分な人数です。

 がん専門医が患者さんに特定の食品を治療目的で処方することはなく、保険の承認を受けた食品も存在しません。これは日本だけでなく、米国を含む他国でも同じ状況です。

有効成分が入っていれば効果があるのか

 怪しい情報に惑わされないために知っておいてもらいたいのが、「有効成分…

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がん研究者/アラバマ大学バーミンハム校助教授

筑波大学医学専門学群卒。卒業後は脳神経外科医として、主に悪性脳腫瘍の治療に従事。患者と向き合う日々の中で、現行治療の限界に直面し、患者を救える新薬開発をしたいとがん研究者に転向。現在は米国で研究を続ける。近年、日本で不正確ながん情報が広がっている現状を危惧して、がんを正しく理解してもらおうと、情報発信活動も積極的に行っている。著書に「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療」(ダイヤモンド社、勝俣範之氏・津川友介氏と共著)。Twitterアカウントは @SatoruO (フォロワー4万5千人)。