山本佳奈の健康ナビ

コロナで注目の簡易検査キット 梅毒やクラミジアでも

山本佳奈・ナビタスクリニック内科医、医学博士
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抗原検査では、採取した鼻の粘膜と抽出液を混ぜ、検査プレートに滴下する=奈良市下三条町で2022年1月19日午前10時54分、林みづき撮影
抗原検査では、採取した鼻の粘膜と抽出液を混ぜ、検査プレートに滴下する=奈良市下三条町で2022年1月19日午前10時54分、林みづき撮影

 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)をきっかけに、すっかり身近なものとなった簡易検査キット。誰にも知られず、いつでも、自宅でもできることから、コロナだけでなく、梅毒やクラミジアなど感染の拡大が懸念されている性感染症(STD)への活用にも関心が高まりそうです。クリニックの内科医、山本佳奈さんが解説します。

頻繁な検査で感染予防?

 先日、発熱しなかったものの、倦怠(けんたい)感が強くて寝込んでしまいました。「もしかして新型コロナに感染したかも」と思い、自宅にあった簡易な迅速抗原検査キットを使って自分で検査してみました。これまでも体調不良や渡航のため、インフルエンザやコロナの迅速抗原検査を何度かやってみたことがあります。ただ、鼻腔(びくう)内に綿棒を入れる時の痛さが想像できるため、自分で入れることに抵抗感がありました。しかし、倦怠感がなかなか取れず、万一コロナだったら翌日からの勤務に支障をきたすと考え、覚悟を決めました。

 外来の現場では、発熱や風邪症状を主訴に受診され、「自宅でやった迅速抗原検査は陰性でした」とおっしゃる方が増えてきました。検査キットをどうやって入手したのか尋ねると、「会社から配布された」「自分でいくつか購入して自宅に置いている」といった答えが多く、「『定期的に簡易検査をやるように』と、会社から指示を受けている」という方もいました。

 医療機関を受診せずとも、いつでも、どこでも、個人でできる簡易検査は、体調が悪い時や、人と会ったり旅行したりする前に、コロナに感染しているかどうかを、ある程度の精度で確かめられるだけにとどまりません。

 無症状の18歳以上の5869人を対象に迅速抗原検査キットを使って感染者を特定し、自主隔離により感染の連鎖を止めることを目的としたイギリス・リバプールでの調査や、コロナ感染者を減らすための定期検査の頻度についてシミュレーションしたアメリカ・スタンフォード大学のChin氏らによる調査などから、迅速抗原検査でも頻繁に自主検査をすることがコロナの感染予防に役立つことが示されています。つまり、自主的にする簡易検査は、公衆衛生の観点からも有用であるというわけです。

コロナ下で増える性感染症

 コロナパンデミックをきっかけに普及し、多くの人に受け入れられるようになった簡易検査ですが、今年の5月、アメリカにおける梅毒に対する自己検査の推進と、今後の展望について考察した記事が科学誌「ネイチャー」に掲載されました。

 記事では、…

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山本佳奈

ナビタスクリニック内科医、医学博士

やまもと・かな 1989年生まれ。滋賀県出身。医師・医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒、2022年東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒。南相馬市立総合病院(福島県)での勤務を経て、現在、ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員を務める。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)がある。