医療プレミア特集

光免疫療法開発者に聞く 「がんの8~9割を治せるようにしたい」

永山悦子・論説委員
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関西医科大光免疫医学研究所の所長に就任した抱負を語る小林久隆・米国立衛生研究所主任研究員=神戸市中央区で2022年5月26日、永山悦子撮影
関西医科大光免疫医学研究所の所長に就任した抱負を語る小林久隆・米国立衛生研究所主任研究員=神戸市中央区で2022年5月26日、永山悦子撮影

 がんをピンポイントで攻撃する新たな治療法「光免疫療法」(※)を開発した小林久隆・米国立衛生研究所(NIH)主任研究員が、関西医科大(大阪府枚方市)に今春開設された「光免疫医学研究所」の所長に就任した。長く米国を拠点にしてきた小林さんが、日本の研究所に参画したのはなぜか。光免疫療法は今後、どのように広がるのか。5月に神戸市で開かれた学会での講演のため帰国した小林さんに聞いた。

関西医科大に研究所を創設

――光免疫療法に特化した研究所は、世界でも初めての試みです。米国ではなく、日本に作ったのはなぜですか。

◆日本で承認を受け、昨年から治療が始まったことが大きな理由です。患者さんの承諾を得られれば、治療前後の組織の標本を提供してもらい、分析することが可能になります。これまでマウスを使った実験を重ねてきましたが、ヒトでなければ分からないことはたくさんあります。さまざまな状態の患者さんの標本は、新たな貴重な情報を与えてくれるでしょう。世界各地で臨床試験が実施されていますが、施設も患者数も限られていますし、試験段階では他施設との情報共有が制限されます。

――患者さんの標本から、どんなことが分かるのですか。

◆どのようにがん細胞が壊されたか、免疫細胞がどんな状態になっているかを調べるなど、治療前後の違いや、治療後の効果を確認することができます。この治療は、がん細胞をピンポイントで壊します。周りの免疫細胞は治療の影響を受けず、「元気」な状態です。免疫細胞が治療で放出されたがん細胞の中身に接し、がんを「敵」と認識して攻撃モードに入れば、がん細胞への直接的な攻撃に加えて、より高い治療効果が期待できます。免疫細胞の振る舞いを詳しく調べられれば、より効果的な治療法の検討に役立つはずです。

――どんな体制で研究を進めるのですか。

◆NIHの私の研究室をモデルに、この治療法のさらなる開発に取り組む機能を担う「基盤開発部門」、治療と免疫の関係や免疫をさらに高める方法を研究する「免疫部門」、実験動物と患者さんの両方の標本などから治療効果を検証する「腫瘍病理学部門」の3部門、約30人体制で取り組みます。基盤開発部門の花岡宏史教授はNIHで一緒に研究した経験があり、私と研究の方向性を共有しています。国内の他の機関にいる研究者たちも束ねるネットワークの要になってほしいと考えています。私はNIHとの兼任になります。

早期の患者への適用に期待

――小林さんは以前、「2030年ごろには、この治療でがんの8~9割を治せるようにしたい」と話していました。その考えは変わっていませんか。

◆はい。変わりませんし、さらに…

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永山悦子

論説委員

1991年入社。和歌山支局、前橋支局、科学環境部、オピニオングループ、医療プレミア編集長など経て、2022年4月から論説委員。2010年に小惑星探査機「はやぶさ」の地球帰還をオーストラリアの砂漠で取材し、はやぶさ2も計画段階から追いかける。ツイッターは、はやぶさ毎日(@mai_hayabusa)。好きなものは、旅と自然と山歩きとベラスケス。お酒はそこそこ。