男女のデザインが同じジェンダーレス水着=フットマーク提供
男女のデザインが同じジェンダーレス水着=フットマーク提供

 今年は早くに梅雨が明け、近年にも増して暑い夏がやってきました。新型コロナウイルス感染症の流行以来、ほとんどの学校が水泳の授業や夏休みのプール開放を中止していましたが、この夏はそうでもないようです。でも、ここにきて第7波がやってきたようですから、どうなることか。

 そんな夏に先立ち、学校の児童生徒向けに新作水着が発売され話題になっています。男女の体形が目立たない「ジェンダーレス水着」(男女共用セパレーツ水着)です。毎日新聞のネット版でも詳しく紹介されました。

 まず、どんなデザインかというと、「紺色のシンプルな長袖の上着に、ハーフパンツ」で「胸や腰の部分にゆとりがあり、男女の体形の違いが目立ちにくい仕様になっている」とのこと。

 だけど、体にピッタリしてなくて泳ぎにくくはないのでしょうか。いいえ、心配ご無用、「空気で膨らまないよう左右の腰付近に穴があるほか、ハーフパンツにはっ水加工を施して、ぬれても重くなりにくいようにした」のだとか。

 まあ、百文字は一見にしかずなので、上記の写真でご確認いただければと思います。

ジェンダーレス水着は誰のために?

 このような水着が開発されたのは、体形を気にしたり肌の露出を嫌ったりする子どもが増えたからだそうです。昔は学校で着せられる水着といえば、男子は競泳型、女子はワンピース型の紺色のあれが定番でした。当時だって嫌がる子どもはいたでしょうが、我慢して着るか別の理由をつけて授業を見学するかしかなかったのだと思います。

 ところが、2000年代に入ると違うデザインのものが少しずつ出てきます。女子の水着では大腿(だいたい)部まで隠れる丈の長いタイプやセパレート型が登場。それにともない、男子のパンツもトランクス型に形を変え、丈も膝上まで伸びました。さらに、10年ぐらい前からは、紫外線をカットできる「ラッシュガード」という長袖の上着も販売されています。こちらは男女兼用です。

 こうした流れは、メーカーが現場のニーズに応える形で生まれたもので、そこには子どもたちの声が反映されています。思春期にさしかかれば異性の…

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明治大学子どものこころクリニック院長

やまと・ひろゆき 明治大学子どものこころクリニック院長。同大文学部心理社会学科特任教授。1957年東京都生まれ。精神科医、医学博士。専門は児童青年期の精神保健。おもな著書に「子どものミカタ」(日本評論社)、「母が認知症になってから考えたこと」(講談社)、「芝居半分、病気半分」(紀伊國屋書店)、「世界一やさしい精神科の本」(斎藤環との共著・河出文庫)など。