理由を探る認知症ケア

認知症の女性がオムツを触っていた思いがけない理由

ペホス・認知症ケアアドバイザー
  • 文字
  • 印刷
 
 

 アルツハイマー型認知症の70代女性、Kさんは、骨折して入院したことをきっかけに、それまで使ったことのなかったオムツで生活することになりました。ある時、オムツに手を入れ、汚れた手で周りを触ってしまったため、オムツに触れることができないよう、入院中は「つなぎ服」(つなぎタイプの介護用パジャマ)を着ることになりました。退院後に上下が分かれた服で過ごし始めると、Kさんはまたオムツを触るようになってしまいます。担当する介護職員たちは、さまざまな原因を探りますが、オムツを触る行為はなかなかやみません。Kさんはなぜオムツを触ってしまうのでしょうか。認知症ケアアドバイザーのペホスさんが解説します。

つなぎ服を着せられたKさん

 アルツハイマー型認知症と診断されているKさん(78歳、女性)は、日常生活で混乱しやすいことが多く、誰かの見守りが必要だったため、要介護認定を受けて介護サービスを利用していました。

 息子さん夫婦と同居し、自宅内での身の回りのことは家族が介助できたため、当初はデイサービスの利用だけでした。ところが、自宅でトイレに行こうとした際、敷居につまずいて転倒。大腿(だいたい)骨の付け根を骨折してしまい、入院し手術をすることになりました。

 術後、しばらくは安静が必要で、それまで使用したことのなかったオムツを使うことになりました。すると、まだ意識がはっきりしない状態の時に、オムツに手を入れて、その手で周りを触って汚すということが起きてしまいました。病院ではつなぎ服を着せられ、一時的に動きを制限する処置が取られました。

リハビリのおかげで退院

 オムツを触ることができないように、Kさんの自由は奪われました。それでも、歩けるようになるためのリハビリを続け、「歩行器を使うか、手すりなどつかまるものがあれば、数メートルは歩ける」レベルにまで回復し、退院する運びとなりました。

 退院までつなぎ服を着ていたこともあり、…

この記事は有料記事です。

残り1680文字(全文2488文字)

ペホス

認知症ケアアドバイザー

ペ・ホス(裵鎬洙) 1973年生まれ、兵庫県在住。大学卒業後、訪問入浴サービスを手がける民間会社に入社。その後、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、訪問介護、介護老人保健施設などで相談業務に従事。コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にて、コーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、かかわる人の内面の「あり方」が、“人”や“場”に与える影響の大きさを実感。それらの経験を元に現在、「認知症ケアアドバイザー」「メンタルコーチ」「研修講師」として、介護に携わるさまざまな立場の人に、知識や技術だけでなく「あり方」の大切さの発見を促す研修やコーチングセッションを提供している。著書に「理由を探る認知症ケア 関わり方が180度変わる本」。介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員。ミカタプラス代表。→→→個別の相談をご希望の方はこちら