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新型コロナ 「屋内ではマスクを外さない」条件で隔離の解除を

谷口恭・谷口医院院長
 
 

 勢いが止まらない新型コロナウイルスの第7波。私が院長を務める太融寺町谷口医院(以下、谷口医院)でも、7月に入ってからの「発熱外来」は感冒症状の患者さんのほとんどが新型コロナ陽性です。谷口医院の発熱外来は「かかりつけ患者」のみを対象としているために、その人の社会背景や性格はあらかじめ分かっています。最近感染した患者さんの大半が注意深く慎重な行動をとる人です。つまり、しっかりと感染予防をしていた人にも感染するほど、BA.5を中心とする現在の流行株は感染力が強いのです。今回は、この感染力の強さに対抗し流行を少しでも抑えるために、現状に即して、検査や隔離についてのルール変更を提案したいと思います。

米国でもまた感染者増

 感染者が増えているのは、日本だけではありません。米疾病対策センター(CDC)が公表している米国の新規患者数は、7月に入って1日平均10万人を超え、13万人に達しています。しかもこの数字は大幅に過小評価されているとみられます。米紙ワシントン・ポストの記事で、Scripps Research(感染症の疫学調査に詳しい研究所)のEric Topol教授は「CDCの報告数は実際の感染者数よりはるかに少ない」と述べています。現在の米国では、自己検査キットを使って検査をするか、あるいは検査を受けない人が多いからです。さらに同教授は、現在流行しているBA.5はワクチンによる抗体や既感染の免疫で抑えきれないことを指摘し、BA.5を「これまで流行してきたなかで最悪の型(the worst version of the virus that we’ve seen)」と表現しています。

 では、昨年の第4波、第5波のときのように、日本では病床が逼迫(ひっぱく)し、重症者も入院できないのかというと、そういうわけではありません。谷口医院の例でいえば、感染者のほとんどが軽症です。39度を超える高熱が出た人も数人いましたが、全員が1~2日で解熱しました。なお、高熱が出た人はワクチン接種を受けていませんでした。残りの感染者は全員ワクチンを接種していて、症状は軽いものでした。

 新型コロナウイル…

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谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。谷口医院ウェブサイト 無料メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中。