「先生、マスクってプライベートゾーンを隠しているんでしょ。だったら、コロナが終わってもつけてていいのかな?」という質問をされた。3年になろうとするコロナ禍で、不安をかかえる子どもたちがマスク越しにつぶやく。子どもとマスクの微妙な関係を再度考えてみたい。

口はプライベートゾーン?

 現在第7波が押し寄せ、新型コロナウイルスの感染者が激増している。夏休みを前倒しした学校もあるし、夏休み直前に学級閉鎖・休校というところもあった。なかなかしぶとい新型コロナウイルス感染症である。

 子どもが言う「プライベートゾーン」は、性教育の中で「他人に見せない、触らせない大事な部分」という意味で使っている。簡単に言うなら、水着で隠された部分だ。この「プライベートゾーン」に顔、特に口も入るかというと、性愛の現実から言うとキスをはじめとしたオーラルセックスまで含めれば、当然プライベートゾーンになる。子どもでもそれは同じことだ。

 マスクは、口というプライベートゾーンを隠している「顔パンツ」みたいなものだというとき、問題はさらに深刻になる。

 一日中帽子を取らない子を私は担任したことがあった。特に頭皮・頭髪に病気があるわけでもない。前担任も「厳しく言ったんですけれど、ずーっとかぶっているんですよ」という。帽子くらいで子どもとの関係を悪くするくらいなら、放っておけばいいのではないかと思い、担任した初日に、私は一言だけ「無理に帽子を取ることはないからね」と本人に伝えた。

 こういうときには、鈍感な私でも心や気持ちの問題だということは分かる。「取りたくない」「取りたいけど取れない」、そんなふうに自分でも困っているんだろうと思った。2週間後に彼はいきなり帽子を取って教室に座っていた。そして、「岡崎先生と50メートル走の勝負をしたい」と体育の時間に突然言い出した。子どもたちは彼の変化に騒いでいたが、私は「暑いから帽子を取ったんだね。いいよ、次の体育の授業に勝負しよう」と言って終わりにした(もちろん、50メートル走では気をつかって、私は彼より少し遅くゴールした)。彼は帽子をかぶることで自分を守り、落ち着かせていたのだろうと思う。

見られたくない、でも見たい

 これによく似たことは今までにもあった。目が見えないくらい、前髪が長いとか、いつも伏し目がちとか、風邪を引いているわけでもないのにマスクを着用している子どもである。そんな子どもたちは、「消極的」「クライ」「奥手」等々と評される子どもたちで、少なからずクラスには存在する。クラスで友だちと打ち解け、一緒に会話や遊びができると次第に顔が見えるようになるのだ。髪を短くカットして、すっきりした顔になって、笑うとこんなに可愛いのかとびっくりすることだって少なくなかった。

 コミュニケーションがうまく取れないとか、気質として消極的で周囲からの目が気になる子どもたちはいつの時代も存在する。…

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岡崎勝

小学校非常勤講師、雑誌『お・は』編集人

おかざき・まさる 1952年、愛知県生まれ。愛知教育大学保健体育科卒業。小学校教員(40年以上)を経て、現在は非常勤講師。学校・子育てマガジン「おそい・はやい・ひくい・たかい」(ジャパンマシニスト社)編集人。「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」(同上)編集協力人。2020年8月から動画投稿サイト「ユーチューブ」で15分授業「おかざき学級」https://japama.jp/okazaki_class/ 公開中。近著に「子どもってワケわからん!」「学校目線。」など。