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新型コロナは空気で感染 日本が世界に遅れた理由

高野聡・毎日新聞 医療プレミア編集部
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国立感染症研究所に提出した公開質問状と回答について記者会見する本堂毅・東北大准教授(左)と清水宣明・愛知県立大教授=2022年7月25日、高野聡撮影
国立感染症研究所に提出した公開質問状と回答について記者会見する本堂毅・東北大准教授(左)と清水宣明・愛知県立大教授=2022年7月25日、高野聡撮影

 新型コロナウイルスの感染「第7波」が拡大する中、7月14日に開かれた新型コロナウイルス感染症対策分科会で尾身茂会長はエアロゾル感染(空気感染)に触れ、「効率的な換気」の重要性を提言した。コロナウイルスの感染経路を巡っては、昨夏、国内の専門家有志38人が接触感染や飛沫(ひまつ)感染を重視してきた従来の感染対策を批判し、「エアロゾル感染が主たる感染経路」とする緊急声明を発表した経緯がある。提言は有志の問題提起に応じたように見える。感染経路を踏まえた新型コロナ対策はどうあるべきなのか。議論の経過をたどった。

当初WHOも空気感染に否定的

 2019年末に中国で新型コロナウイルスの感染拡大が問題になった当初、世界保健機関(WHO)は「主として呼吸性飛沫と接触経路によって伝播(でんぱ)する」と説明し、空気感染に否定的だった。政府もこうした知見に基づき、20年2月の専門家会議で「感染経路は飛沫感染と接触感染」と説明した。国内の感染対策も飛沫と接触による感染との想定から、アルコール消毒や手洗い、アクリル板の設置が推奨されてきた。

 感染における飛沫とは、せきやくしゃみ、会話、呼吸などの際に鼻や口から放出される水分を含んだ粒子を指す。これらの粒子は比較的大きく重いため、放出されて数秒で落下する。また落下した粒子を触った手指が粘膜に触れて起こるのが接触感染だ。一方、鼻や口から出た比較的小さな粒子や水分が蒸発した粒子は軽いため、数分から数時間空中に漂う。これらはエアロゾルと呼ばれ、やはり感染の媒介となる。

 緊急声明を出したメンバーの一人、東北大の本堂毅准教授(物理学)は「エアロゾルは吐き出したたばこの煙のように近いほど濃く漂い、長時間感染リスクがある。これは世界中の論文で報告されており、新型コロナがエアロゾルで感染することは世界のコンセンサスだ」と強調する。

 WHOも米疾病対策センター(CDC)もその後の知見の蓄積に伴い、見解を変更した。CDCは20年10月、飛沫感染に加え、エアロゾルでも感染の恐れがあるとし、指針を変更。WHOも昨年春、感染経路にエアロゾル感染と飛沫感染を挙げ、接触感染は起きにくいとする見解を示した。

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高野聡

毎日新聞 医療プレミア編集部

1989年入社、メディア情報部、船橋支局、千葉支局などを経て96年、東京本社科学環境部。埼玉医科大の性別適合手術、茨城県東海村臨界事故など科学環境分野のニュースを取材。2009年より大阪本社科学環境部で新型インフルエンザパンデミックなど取材。10年10月より医学誌MMJ(毎日メディカルジャーナル)編集長、東京本社医療福祉部編集委員、福井支局長などを歴任。