虐待そのあと -親から離れた私が必要としていたもの-

100%、子どもの側に 「もう死なせない」ための代弁者を

医療プレミア編集部
  • 文字
  • 印刷
4歳で児童相談所に保護され、里親家庭や児童養護施設で生活した渡辺睦美さん=東京都千代田区で2022年5月6日、内藤絵美撮影
4歳で児童相談所に保護され、里親家庭や児童養護施設で生活した渡辺睦美さん=東京都千代田区で2022年5月6日、内藤絵美撮影

 「このままじゃ、また子どもが死んでしまう」。取材の度にそう繰り返すのは、福岡市のNPO法人職員、渡辺睦美さん(26)だ。虐待を受けて4歳で児童相談所(児相)に保護され、里親家庭や児童養護施設で暮らした経験を持つ。「死んでしまう」とは、目の届かないところで起きる虐待死だけを指すのではない。児相に保護され、一度は安全が確保されたはずの子どもたちの命と心も、心配している。【黒田阿紗子】

子どもの声を聞いて

 もう黙っていられない――。渡辺さんが、焦りにも似た気持ちで自らの経験を語り始めたのは、2019年のことだ。

 この年、千葉県野田市の栗原心愛(みあ)さん(当時10歳)と、東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)さん(当時5歳)の虐待死事件が大きく報じられた。ともに児相が一時は親と引き離し、保護下に置いていた。その後も児相は支援を続けていたのに、幼い子の死を防げなかった。

 心愛さんは、児相に「家に帰りたくない」と伝えていたが、保護は解除され、最終的に家に連れ戻されて亡くなった。結愛さんは、保護が解除された後に転居し、児相の引き継ぎがうまくいかないまま、両親に宛て「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」とノートに書き残して亡くなった。二つの事件には、通じるものがあると感じた。

 「なぜ死を防げなかったのか。それは、子どもの声を、周囲の大人がちゃんと聞いていなかったからだと思う。私の時も、そうだったから……」

 重なったのは、自らが10年過ごした里親家庭での経験だった。

「いい子にしていたら、養子縁組してあげ…

この記事は有料記事です。

残り5745文字(全文6377文字)

医療プレミア編集部

毎日新聞医療プレミア編集部は、国内外の医師、研究者、ジャーナリストとのネットワークを生かし、日々の生活に役立ち、知的好奇心を刺激する医療・健康情報をお届けします。