Dr.中川のがんのひみつ

日進月歩の放射線治療 専門人材の育成がカギ

中川 恵一・東大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授
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放射線治療装置「ガンマナイフ」と筆者。東大病院では1990年に国内で初めて導入され、3000例以上の治療実績がある=東大病院で(筆者提供)
放射線治療装置「ガンマナイフ」と筆者。東大病院では1990年に国内で初めて導入され、3000例以上の治療実績がある=東大病院で(筆者提供)

 放射線治療の原則は、放射線をがん病巣に集中させることです。仮に、放射線をがん細胞にだけ完全に集中させることができたら、無限の量の放射線を照射しても、正常細胞への影響は皆無となります。100%の確率でがんは消滅し、副作用はゼロという理想の治療が実現します。

 もちろん、この理想は完全には実現されていませんが、画像診断や照射技術の進歩によって、理想の姿に肉薄しつつあります。

 放射線治療はハイテク医療の代名詞と言えますが、中でも、「定位放射線治療」が注目されています。がんの病巣だけにピンポイントに放射線を集中させる技術により、1回あるいは数回の治療で大線量を一挙に照射します。

 今や、肺がんや前立腺がんなど、多くのがんに対して、定位放射線治療が用いられていますが、その原点は放射線の一種のガンマ線を使う「ガンマナイフ」です。約200個のコバルト線源を半円球状に配列し、各線源から出る細いビームを一点に集束させて、脳内の病巣に集中させる治療です。金属フレームで頭部を固定することで、0.5ミリ以下の高い位置精度が得られます。

 日本では、1990年にガンマナイフの第1号機が東大病院に導入されました。それに先だって、この装置が開発されたスウェーデンのカロリンスカ大学病院で研修を受けたことを思い出します…

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中川 恵一

東大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1985年東京大医学部卒。スイス Paul Sherrer Instituteへ客員研究員として留学後、同大医学部付属病院放射線科助手などを経て、2021年4月から同大大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。同病院放射線治療部門長も兼任している。がん対策推進協議会の委員や、厚生労働省の委託事業「がん対策推進企業アクション」議長、がん教育検討委員会の委員などを務めた。著書に「ドクター中川の〝がんを知る〟」(毎日新聞出版)、「がん専門医が、がんになって分かった大切なこと」(海竜社)、「知っておきたい『がん講座』 リスクを減らす行動学」(日本経済新聞出版社)などがある。