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新型コロナ 緩む機内感染の追跡 進む感染リスクの許容

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
 
 

 新型コロナウイルスの主流株がオミクロン株に置き換わり、さらにそのオミクロン株も変異を繰り返しています。ますます感染力が強くなった新型コロナウイルスは、飛行機内ではどの程度のリスクとなるのでしょうか。過去の連載「新型コロナ『発熱でも出勤要請』『陰性でも自粛』」では、機内座席の近くに陽性者がいたというだけの理由で詳細を一切知らされないまま2週間の自己隔離を要請された太融寺町谷口医院(以下、谷口医院)の患者さんの話を紹介し、その理不尽さを指摘しました。今回は、そのあまりにも厳しすぎるルールの変遷について、そして実際のリスクについて私見を交えて述べたいと思います。

 上記の過去のコラムで紹介したように、飛行機内の「濃厚接触」の定義は、以前は国立感染症研究所感染症疫学センターにより「国際線においては患者(確定例)の前後2列以内の列に搭乗していた者、国内線においては患者(確定例)の周囲2メートル内に搭乗していた者をそれぞれ原則とする」とされていました。

3月末からのルール緩和

 ところが、厚生労働省は2022年3月29日、国際線の機内の濃厚接触の「定義」及び機内の「ルール」の改定を発表しました。同省は「検査陽性者の同行家族のみ『機内濃厚接触者』として取り扱い、今後自治体に情報共有を行うこと等としました」と新しいルールを説明しています。つまり新ルールでは、感染者の家族でない限り、たとえ感染者の横の席に座っていたとしても、「濃厚接触」には該当しないとみなされ、したがって検査を受ける義務もなくなった、ということになります。以前のように「運が悪ければ無症状でも2週間の隔離」の“恐怖”から解放されたのです。

 このルール変更は歓迎されることです(私はそう思います)。しかしながら、ルールが変更されたのは、機内で感染するリスクが下がったからではありません。その逆に、このルール変更により機内での感染リスクは増大したと考えるべきです。機内で感染したかもしれない人が、感染に気付かずに移動を繰り返し、ウイル…

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太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト 無料メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中。