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なぜ繰り返される「肉の生食」による食中毒 危険なのに食べる心理とは

成田崇信・管理栄養士
 
 

 今年6月、鶏のレアチャーシューをトッピングしたラーメンが原因とみられる食中毒が発生し、提供した店が営業停止処分になったニュースがありました。店のインスタグラムに載っていたとされるレアチャーシューの写真に対し、「どう見ても生」「外側だけしか加熱されていないのでは?」などと、SNS(ネット交流サービス)でも危険性を指摘する声が相次ぎました。

 7月にはテレビ番組の中で、店の名物メニューという表面を湯がいたジビエの刺し身を、芸能人がおいしそうに食べるシーンが放送され、ネット上で批判の声が上がりました。後に番組ホームページに「実際にはお店は加熱してから提供しておりましたが、説明が不十分で誤解を与える表現となってしまいました」と謝罪文を掲載する事態になりました。

 加熱が不十分な食肉を原因とする食中毒については、死亡事例も含め過去に何度もニュースになっています。その危険性も周知されてきたはずですが、なぜこのように繰り返されてしまうのでしょうか。肉の生食の危険性やその背景について解説します。

肉の生食はなぜ危険なのか

 今年は魚介類の寄生虫、アニサキスによる食中毒が例年にないレベルで報告されており、魚の生食にも危険はあります。ただし、十分な冷凍で防ぐことができ、今後も安全に食べることは可能でしょう。それに比べ、肉の生食は一部の例外を除き、基本的に生で食べるにはリスクが高すぎる食材だと考えられています。

【牛肉】

 O157などの腸管出血性大腸菌による汚染が危険要因です。主に牛の消化管に定着している細菌のため、「レバ刺し」の提供が禁じられています。内臓肉以外でも、解体時に病原菌が肉の表面に付着することが避けられず、特別な加工手順を加えた生食可能なもの以外は、刺し身など生で食べることは危険です。

 腸管出血性大腸菌感染症の恐ろしいところは、死亡リスクが高いだけでなく、食べた人から周囲の人に感染させてしまう事例が多く報告されていることです。他人にうつす可能性がある以上、自己責任ではすみません。

 腸管出血性大腸菌食中毒は、表面に付着している少ない菌数でも発症することが分かっています。生食以外にも、バーベキューなど自分で肉を焼く場合に、生肉をつかんだ箸やトングで焼けた肉を取り分けただけでも食中毒を発症することがあります。肉は中心までよく焼くこと、箸やトングは生肉用、加熱肉用と別々に用意することが大切です。

【豚肉】

 2015年6月、食品衛生法で豚の肉や内臓を生食用として販売・提供することが禁止されました。豚の生食の危険性については、…

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管理栄養士

なりた・たかのぶ 1975年東京生まれ。社会福祉法人で管理栄養士の仕事をするかたわら、主にブログ「とらねこ日誌」やSNSなどインターネット上で食と健康関連の情報を発信している。栄養学の妥当な知識に基づく食育書「新装版管理栄養士パパの親子の食育BOOK」(内外出版社)を執筆。共著に「各分野の専門家が伝える子どもを守るために知っておきたいこと」(メタモル出版)、監修として「子どもと野菜をなかよしにする図鑑 すごいぞ! やさいーズ」(オレンジページ)などに携わっている。