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新型コロナ 「2類相当」で失われたもの

山本佳奈・ナビタスクリニック内科医、医学博士
沖縄県の入院待機ステーションで入院調整など対応に追われる看護師ら=2022年8月1日午後0時1分、喜屋武真之介撮影
沖縄県の入院待機ステーションで入院調整など対応に追われる看護師ら=2022年8月1日午後0時1分、喜屋武真之介撮影

 岸田文雄首相が先月24日、新型コロナウイルス感染者の全数把握を見直す方針を表明しました。コロナは感染症法の分類で「2類相当」に位置づけられています。全ての患者情報の届け出が義務付けられていて、医師は国のシステムに情報を入力しなければならず、感染者の急増で医療現場の負担が増大していたといいます。しかし、苦しんでいるのは医師だけではありません。クリニックでコロナ患者を診てきた内科医の山本佳奈さんは、コロナが2類相当であるがゆえに失われたものに、もっと目を向けてほしいと訴えます。

10日の療養期間

 日本では、感染症法に基づき、厚生労働省や保健所を中心にコロナ対策が行われています。コロナを含むさまざまな感染症が、症状の重さや感染力などに応じて1~5類の5段階に分類され、入院の勧告、就業制限、健康状態の報告、外出の自粛要請、建物への立ち入り制限といった措置が取られています。

 新型コロナは、この分類とは別の「新型インフルエンザ等感染症」に指定されていて、結核や重症急性呼吸器症候群(SARS)など2類感染症と同等以上の措置を取ることができるため、「2類相当」と呼ばれています。症状のあるコロナ患者の場合、発症日を0日目とし、10日間(無症状患者は7日間)の療養が求められています。現在の運用では、入院の必要性があると判断された場合を除き、原則、自宅待機となっています。

 コロナ変異株の「オミクロン株」が南アフリカで確認された当初は、オミクロン株に感染した患者を原則入院させる対策が取られていました。急速な感染拡大とともに、病院のベッド占有率が上昇。病院の業務が圧迫されることが懸念され始め、2022年1月5日に厚労省が通知を出して、在宅でも治療が受けられるようになるまで、患者は原則入院させる措置が続きました。

入院を強いられた男性

 医療機関は、厚労省が出す通知に基づいてコロナ対策を講じています。今年の1月初め、この在宅治療を認める通知が出る前に、コロナと診断した患者が強制的に入院させられるという症例を経験しました。患者は、もともと高血圧で通院中の50代の男性で、新型コロナウイルスワクチンの接種を受けていませんでした。発熱と倦怠(けんたい)感を主訴に受診され、医療用の迅速抗原検査で陽性を確認。保健所に発生届を提出したところ、保健所から男性に連絡がありました。男性は自宅療養を希望し、私もその時点では入院の必要はないと判断していたにもかかわらず、診断がついたその日の夕方、保健所の指示により入院することになってしまいました。

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ナビタスクリニック内科医、医学博士

やまもと・かな 1989年生まれ。滋賀県出身。医師・医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒、2022年東京大学大学院医学系研究科(内科学専攻)卒。南相馬市立総合病院(福島県)での勤務を経て、現在、ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員を務める。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)がある。