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新型コロナ まだまだ続く医療者の「楽しみを我慢する日々」

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
新型コロナウイルス感染者の対応に追われる保健所の職員=長崎県佐世保市で2022年8月26日午後3時38分、城島勇人撮影
新型コロナウイルス感染者の対応に追われる保健所の職員=長崎県佐世保市で2022年8月26日午後3時38分、城島勇人撮影

 新型コロナウイルスが日本で流行しだしてから約2年半の間、我々医療者は、患者さんから、世間から、あるいはメディアからいろんなことを言われ続けてきました。感謝の言葉など、我々の心が温まる声も数えられないほどいただきましたが、その一方で“暴言”も受けています。そして、我々がつらくなるのは他人からの言葉だけではありません。今回は、新型コロナ流行以降、医療者がこれまでに味わってきた苦痛とは、そして今後も耐えなければならない苦悩とは、どのようなものかについて、私見をふんだんに取り入れて述べてみたいと思います。

 まずは、我々医療者がこれまでどのような苦痛を体験してきたかを経時的に紹介したいと思います。

 私が院長を務める太融寺町谷口医院(以下、谷口医院)の発熱外来に第1例の患者さんが来たのは、2020年1月31日でした。世界保健機関(WHO)が緊急事態宣言を行った翌日です。この頃は、まだコロナについて分からないことだらけでしたが、発熱で苦しんでいる患者さんを放っておくわけにはいきません。

 この日診察した患者さんは、中国から帰国して発熱し、10軒以上の医療機関から断られ、行き場をなくしていた人でした。このときはPCR検査が保健所ですらできませんでしたから、「(診察してみて)新型コロナの疑いがあったらどうしよう……」と悩みました。しかし結局、診断は「細菌性扁桃(へんとう)炎」でした。つまり細菌感染に…

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太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト 無料メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中。