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新型コロナ マスク拒否の乗客降ろしたバス会社を処分 「それでもマスクをつけてほしい」

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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北京冬季オリンピックの取材で、マスクを着用してバスに乗車する報道関係者=中国の張家口・国家距離センターで2022年2月1日、宮間俊樹撮影
北京冬季オリンピックの取材で、マスクを着用してバスに乗車する報道関係者=中国の張家口・国家距離センターで2022年2月1日、宮間俊樹撮影

 私が院長を務める太融寺町谷口医院の患者さんから、というよりも、この連載の読者や私が発行しているメールマガジンの読者から、過去1週間で最もたくさん寄せられた質問が「マスクを着用しない乗客を降ろしたバス会社が処分を受けたことをどう思うか」というものです。この件についてはネット上でも大きな論争になっているようで「バス乗車時にはもはやマスク不要」と考える人が増えていると聞きます。その一方で、そのような風潮が広がることに恐怖を感じている人も少なくありません。今回は、まずこの事件を振り返り、バス内でのマスク着用が本当に求められなくなるのか、もしもそうなるなら重症化リスクがある人はどうすればいいのか、といった点について私見を交えて述べていきたいと思います。

三つの行為を違法と認定

 まずはこの“事件”を整理してみましょう。事件が起こったのは2022年4月7日。バス会社(伊豆箱根バス)が社外に向けて事情を公表したのが9月1日です。さまざまな報道から経緯をまとめると次のようになります。

 ・22年4月7日、路線バスの運転手が、乗客の1人がマスクを着用していないことに気づいた

 ・この路線は沿線の大学病院を利用する乗客が多く、事件当時は25人が乗車していた

 ・運転手は車内放送でマスク着用を求めたが、この乗客は応じなかった

 ・運転手は、この乗客を停留所でないところで降ろした

 ・バス会社の対応に納得できなかった乗客は中部運輸局に連絡した

 ・4月22日、中部運輸局が同バス会社に監査に入った

 ・9月1日、中部運輸局は「正当な事由が無く、運送の継続を拒絶した」(道路運送法第13条違反)など3項目の違法行為を認定し、同社に対し、バス2両について各25日間、使用を禁止する「車両停止処分」をした。

 中部運輸局は今回の運転手と会社の行為に対し、3項目の法律違反を認定しました。つまり、「バスの運転手はマスク不着用の乗客を降ろしてはいけなかった」というのが、法律に基づいた中部運輸局の見解です。

 聞くところによると、いわゆる「マスク反対派」の人たちは、まるで鬼の首をとったかのようにこの中部運輸局の判断を大きく取り上…

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト 無料メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中。