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園児バス置き去り死 再発防ぐために大切なことは何か

渡部達也・NPO法人ゆめ・まち・ねっと代表
川崎幼稚園の園庭に設置された献花台。事件発生から2週間近くがたっても、手を合わせる人の姿は絶えない=静岡県牧之原市静波で2022年9月15日午後0時56分、深野麟之介撮影
川崎幼稚園の園庭に設置された献花台。事件発生から2週間近くがたっても、手を合わせる人の姿は絶えない=静岡県牧之原市静波で2022年9月15日午後0時56分、深野麟之介撮影

 静岡県牧之原市の認定こども園に通う3歳の女児が通園バスに取り残され、熱中症で死亡した事件から5日で1カ月になります。通園バスに園児が取り残されて死亡する事件は、昨年7月にも福岡県中間市の保育園で起きたばかりです。このような痛ましい事件を繰り返すまいと、降車時のダブルチェックを徹底したり、子どもにクラクションを鳴らす方法を教えたりするなど、各地でさまざまな対策が講じられています。静岡県富士市で子どもたちの居場所作りに取り組む渡部達也さんは、こうしたニュースを見るたび、モヤモヤするといいます。まずやるべきことがあるのではないか――。さまざまな背景を持つ子どもたちと関わる際の自分たちの姿勢を振り返りながら、そう指摘します。

音声チックの症状が出てきたダイゴ

 「ンッ……たっちゃん(筆者の愛称)……ンッ……ハロウィンだから……ンッ……カボチャ……ンッンッ……飾ったの?」

 学校帰りの子どもたちの居場所「おもしろ荘」に小学6年生のダイゴがやってきました。軒下に飾ったカボチャに気づいたようです。

 「そうだよ~」

 そう返しながらも、「あれ、ダイゴ、音声チック(せき払いや突発的に声を発する症状)が出てるなぁ」と気になりました。 活動の相棒でもある妻を見ると、小さくうなずき、アイコンタクトで「私も気づいたよ」と伝えてきました。

 「ダイゴぉ、久しぶりに2階で卓球でもやるか?」

 「ンッンッ……いいね……ンッ……やろやろっ」

 ダイゴのことを少し観察したくて、1対1で遊びながら、ダイゴとの時間を持てる卓球に誘いました。

 「ダイゴ、腕、落ちてないねぇ」

 「ンッ……でしょ……ンッ……この前テレビで卓球やってたから……ンッンッ……見てたんだよね」

 卓球をやっている最中も絶えず音声チックが観察されました。

 「外れることを願っていた想定内の状態になっちゃったかぁ……」

 そんなことを思いながら、ダイゴと卓球ボールを打ち合いました。

 小学2年生の時から、足しげくおもしろ荘に遊びに来るようになったダイゴ。生来性の発達の凸凹を感じるような言動が随所に見られました。その発達の特性に親や教員が気づかないでいると、思春期を迎える頃に、生きづらさが増すのではないかと想定していたのです。

 ひとり親であるお母さんは、ダイゴへの声かけが乱暴でした。

 「ダイゴ、宿題もやんねぇで、何、遊んでんだっ!」

 「ダイゴ、何時に帰ってくるって約束したよっ!」

 いつもそんな調子です。

 せめて、教員がダイゴの発達の特性に気づいて、学校生活に配慮してくれるといいなぁと願いました。しかし、ダイゴの同級生たちからは、度々、ダイゴが教員に怒られたという話を聞かされました。

 「ダイゴ、今日、おもしろ荘、来ないんじゃないかなぁ。帰りに教室、残されて、めっちゃ怒られてたから」

 「なんで怒られてたの?」

 「え~わかんない。いつものことだからねぇ(笑い)」

 チック症状を表しながら、おもしろ荘にやってきたダイゴ。

 (これは二次的な障がいの始まりに過ぎないんだろうなぁ……)

 次なる事態の悪化を想定…

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NPO法人ゆめ・まち・ねっと代表

わたなべ・たつや 1965年静岡県三島市生まれ。茨城大卒。88年静岡県庁入庁。児童相談所ケースワーカーや大規模公園「富士山こどもの国」の設立・運営、国体および全国障害者スポーツ大会の広報などに携わる。「まちづくり」という夢を追い求め、2004年に16年余り勤めた県庁を退職。同県富士市に移住し、同年秋、妻・美樹と共にNPO法人「ゆめ・まち・ねっと」を設立。空き店舗を活用した放課後の居場所「おもしろ荘」や地元の公園と川で自由な遊びを楽しむ「冒険遊び場たごっこパーク」、「0円こども食堂」などの開催を通じて、子どもの遊び場づくり・若者の居場所づくりに取り組む。里親として虐待を受けた子どもの社会的養育にもかかわっている。愛媛県松前町が創設し「義農精神」(利他の精神)を体現する活動に取り組む個人・団体を表彰する第1回「義農大賞」など受賞多数。 著書に「子どもたちへのまなざし-心情を想像し合い 積み重ねてきた日常 切れ目のない関係性-」(エイデル研究所)。