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患者は年間2万人 10月に増える「アニサキス食中毒」

志賀隆・国際医療福祉大医学部救急医学主任教授(同大成田病院救急科部長)
 
 

 食欲の秋のせいか、先日の当直では一晩に3人も腹痛の患者さんが運ばれてきました。腸閉塞(へいそく)の方もいれば、胃腸炎の方もいるし、急性虫垂炎の方もいました。腹部の臓器は実に多種多様なので診察が難しいです。そんな秋の腹痛ですが、毎年10月に増える原因が一つあります。なので秋の腹痛では救急医はいつも以上に注意をしています。それは「アニサキス」による腹痛です。我々の大好きな「旬の魚」に原因があるとも考えられています。

アニサキスとは

 アニサキスは寄生虫です。イルカ、クジラ、アザラシなどの海の哺乳類の胃などに寄生しています。ただし、成虫の寄生先は確かにイルカなど哺乳類ですが、幼虫の寄生先は別で、オキアミや、さまざまな魚類です。魚が餌としてオキアミを食べると寄生しているアニサキスが魚の胃に入り、さらにその魚をイルカなどが餌として食べるとアニサキスはイルカなどの胃に入る、という仕組みです。そして、アニサキスが寄生する魚介類は、アジ・イカ・イワシ・カツオ・サバ・サケなどさまざまです。

 アニサキスは小さく、細長い形をしています。体長2~3cm、幅0.5~1mmほど。アニサキスで腹痛を訴える患者さんにはかなり強烈に痛がる方も多いのですが、その原因となる寄生虫は「こんなに小さいのに、あんなに痛いの?」と思うくらいコンパクトです。私が医学生のときに、寄生虫の授業で、サバを先生たちが買ってきてくれて、学生たちが解剖をしました。そうすると、たくさんのアニサキスがサバの体内で生きていて、ミミズのように白い糸状の体を動かしていました。

人間の体に入るわけ

 アニサキスの幼虫が寄生している生の魚介類を人間…

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国際医療福祉大医学部救急医学主任教授(同大成田病院救急科部長)

しが・たかし 1975年、埼玉県生まれ。2001年、千葉大学医学部卒業。学生時代より総合診療・救急を志し、米国メイヨー・クリニックでの救急研修を経てハーバード大学マサチューセッツ総合病院で指導医を務めた救急医療のスペシャリスト。東京ベイ・浦安市川医療センター救急科部長などを経て20年6月から国際医療福祉大学医学部救急医学教授、21年4月から主任教授(同大成田病院救急科部長)。安全な救急医療体制の構築、国際競争力を産み出す人材育成、ヘルスリテラシーの向上を重視し、日々活動している。「考えるER」(シービーアール、共著)、「実践 シミュレーション教育」(メディカルサイエンスインターナショナル、監修・共著)、「医師人生は初期研修で決まる!って知ってた?」(メディカルサイエンス)など、救急や医学教育関連の著書・論文多数。