
過去のコラム「新型コロナ ワクチン接種はよく考えて」(2021年6月7日)を公開したとき、大勢の読者の方からさまざまな意見をいただきました。「(私の考えに)共感します」というものから、ほとんど苦情やクレームに近いものまで幅広い声を聞くことができました。興味深いのは「(私の主張に)同意できない」という人のなかには「ワクチンを強く否定する人」も「ワクチンを強く肯定する人」もいたことです。今回は、新型コロナワクチンの登場から間もなかった当時に私が述べたポイントを簡単に振り返り、その後ワクチンについて新たに分かってきたことを紹介し、今後我々はワクチンをどのように考えるかについて私見を述べたいと思います。
太融寺町谷口医院(以下、谷口医院)の患者さんのみならず、本連載の読者や私が主催するメルマガの読者からも「ワクチンを受けるべきでしょうか」という質問が今もたくさん寄せられます。その勢いがやや減少した時期もあったのですが、最近は再び増えてきています。特に多いのが「子供には打たせるべきでしょうか」と「妊娠したのですが受けるべきでしょうか」という質問、つまり小児と、妊娠中の女性はどうすべきか、というものです。
「理解してから接種する(しない)」が原則
先述の過去のコラムで私が述べたポイントは以下の通りです。
・日本では新型コロナワクチン接種後に100万人あたり約14人が死亡している。ただしほとんどが「因果関係は不明」とされている(注1)
・「非常事態」下では「リスクを抱えてベネフィット(利益)に期待する」という考えは成り立つ。実際、効果が高いのは確実で、20年12月に米食品医薬品局(FDA)が発表した報告では、新型コロナワクチンの有効率は94.5%とされていた
・「ベネフィットは高そうだがリスクもありそう」という事実を直視し、本連載で私が以前から提唱しているワクチンの原則「理解してから接種する」(「理解した上で接種しない」も含む)を実践してほしい
このコラムを公開して1年4カ月が経過し、ワクチン接種の対象者が広げられました。現在の対象は5歳以上の全員です。単に「ワクチン接種を受けら…
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太融寺町谷口医院院長
たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト 無料メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中。