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新型コロナ この冬の発熱対策 政府方針では安心できない

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
 
 

 インフルエンザに感染する人がじわりと増えてきています。そしてこの冬は、インフルエンザが3年ぶりに流行するのは間違いないと(私も含めて)多くの医療者は考えています。後述するように、実際にその兆しはすでに見え始めています。一方、新型コロナウイルス感染症の「第7波」は終わりを迎えつつありますが、すでに今冬の第8波を予測する声もあります。もしも新型コロナとインフルエンザが同時に流行すれば、「必要な検査を受けられない」「入院が必要なのにできない」といった医療逼迫(ひっぱく)に再び陥る可能性がでてきます。では、もしもこの冬、高熱や感冒症状などに見舞われたときにはどうすればいいのでしょうか。今回は私見を交えて対処法を紹介したいと思います。

 まず、インフルエンザの現在の状況をみてみましょう。過去2年間は世界的にインフルエンザの流行が起こりませんでした。その最大の理由は世界中で実施されたロックダウン(都市封鎖)や自粛のおかげです。人と人との接触が減れば、当然コロナだけでなくインフルエンザを含む上気道炎(風邪)の感染者は減少します。

豪州などで4月ごろインフルエンザが流行

 ところが今年は過去2年ほどには行動制限が行われなかったこともあり、豪州とニュージーランドでは、冬のシーズンが始まった4月中旬からインフルエンザの感染者が急増し、過去数年間で最大規模となりました。感染のピークは5月から6月にかけてでした。感染規模の大きさは、豪州の過去6年間の感染者数を表した「グラフ1」を見てください。一目瞭然で、過去2年の患者報告数はほぼゼロなのに対し、今年は過去5年間の平均と比べても数倍に上っています。

 豪州が冬となる時期は日本では夏に相当しますから、同国での流行が終わった今、今度は日本を含む北半球の国々でインフルエンザが流行する可能性は高いといえます。実際、すでにその兆候は表れています。厚生労働省の報告によると、今年9月26日~10月2日に報告された全国のインフルエンザ感染者数は51人で、昨年の同じ時期(5人)の10倍以上です。

 新型コロナもみてみましょう。インフルエンザが流行しても新型コロナの流…

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太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト 無料メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中。