
ついこの間までの「ソーシャルディスタンス」「黙食」「オンライン講義」などが遠い昔であるかのように、“日常”が戻ってきています。時間と場所によっては、街を歩く人の大半がマスクをしていない光景も増えてきました。バイデン米大統領が発言したような「(新型コロナウイルス感染症の)パンデミック(世界的大流行)は終わった」という声は日本の政治家や官僚からは聞かれませんが、すでにこの国でも「新型コロナは過去のもの」と考える人は確実に増えています。ですが、そのようなムードだからこそ新型コロナを恐れている人も少なからずいます。今回は、そういった人たちが現状をどのようにとらえているか、といったことを含め「ポストコロナの問題点」を、私見を交えて述べたいと思います。
まずは「新型コロナがどれだけ軽症化したか」をデータで確認していきましょう。表は、大阪府における第1波から第7波の年代別の死亡率を推計したものです。
◇死亡は1000人に1人になった
まず、注目すべきは第1波と第4波の死亡率、特に70代以上の死亡率です。それぞれ22.0%、15.6%と極めて高い死亡率を示しています。第1波よりも第4波の死亡率の方が低くなっていますが、人数でみれば、第1波、第4波の死亡者数はそれぞれ、72人、1308人です。大阪府では第4波で医療崩壊が起こりました。
ところが、第7波では70代以上の死亡者数が915人と少なくない数字にみえますが、これは陽性者が9万246人と激増したためで、死亡率でみるとわずか1.01%です。総計(全年齢)での死亡率は0.10%です。つまり、大阪府の第7波の総括としては「70代以上では100人に1人が、全年齢では1000人に1人が死亡する病気」となります。
この数字をどうとらえるかには個人差があるでしょうが、診察室でたくさんの患者さんにこの数字を伝えている私の印象でいえば、大半の人が「最近の新型コロナは軽症」、あるいは(バイデン大統領が言ったように)「新型コロナは終わった」といったコメントをされます。
「もうワクチンは終わりにします」
私が診察室でこういった第7波の死亡率の話をする…
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太融寺町谷口医院院長
たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト 無料メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中。